中高年夫婦の7割がセックスレス

中高年夫婦の7割がセックスレス
日本性科学会が中高年「性」白書
 セックスレスの中高年夫婦は12年間で倍増し、約7割に上る。日本性科学会セクシュアリティ研究会の調査結果を同研究会代表で田園調布大学名誉教授、国立保健医療科学院客員研究員の荒木乳根子氏(臨床心理士)が11月19日に開かれた「性と健康を考える女性専門家の会シンポジウム2016」で発表。同氏は「たった12年間でこれほどセックスレスが急増していることに大変驚いた。要因として、夫婦間の性の位置付けや関係性の希薄化、性交の有無に女性の意思が強く反映されるようになったことなどが考えられる」との見解を示した。
50歳代男性の86%がセックスレス
 産婦人科医やセックス・セラピストとして活動する同研究会のメンバーは、臨床の場で中年期から高齢期にかけて、性に関するさまざまな問題が生じていることを経験してきた。そこで、1999年に有配偶者の中高年を対象とした調査を開始、今回が2回目になる。
 調査方法は、2011年1月~12年12月、関東圏に在住する40~79歳の男女を対象に、研究メンバーが多方面に調査票と返信用封筒を配布した。回収数1,242部、有効回答1,162人(有配偶者・男性404人、女性459人、単身者・男性92人、女性207人)。
 日本性科学会はセックスレスの定義を「特殊な事情がないにもかかわらず、カップルの合意した性交、およびセクシュアル・コンタクトが1カ月以上ない場合」としている。
 調査結果によると、「年に数回」 「1年間全くない」と回答したセックスレスの夫婦は、2000年調査では40%、2012年調査では73%で、1.8倍に増えている。前回調査では年齢が高くなるにつれ、セックスレスの割合が増えていたが、今回の調査では男性の50歳代が86%で前回調査32%の3倍に迫る勢いで増えており、60歳代、70歳代よりも多かった(図1)。
 セックスレスになった平均年齢は、男性52.9歳、女性50.6歳で、日本人女性の閉経年齢とほぼ一致する。一方、配偶者との性交を望み、実際に月1回以上の性交がある人は、2000年調査では男性78%、女性79%、2012年調査では男性44%、女性68%で、希望通りにセックスできる男性が大幅に減少している。
「仕事で疲れ、面倒くさい」
 セックスレスの理由は自由記述の回答で多岐にわたるが、男女ともに「時間に追われ、面倒くさい」という回答が目立つ一方、「更年期障害をきっかけに週1が突然ゼロになった」という男性からの訴えもあった。
これについて荒木氏は「女性は閉経後、性交痛などの性障害が強まる。10年前の妻たちは妻の務めとして夫の求めに応じたけれど、昨今ははっきり”ノー”という妻たちが増えているということかもしれない。就労女性が増え、経済力を得て相対的に家庭内での力が強くなったことや、仕事で疲れていることも影響しているのではないか」と述べた。
 コンドームメーカーのDUREX社が2005年に行った世界26カ国のセックスの頻度を比較した調査では、日本は年間平均45回で、26か国中最下位。今回の調査では中高年が対象とはいえ、さらに性交回数が少ないことが明らかになった。
 同氏は「生殖期を終えた中高年はセックスレスでよしと考えるのか、個対個の生身での触れ合いである性交は愛情確認や安らぎに欠かせないものだと考えるのかは、1人1人の選択になる」との考えを示した。
 また、夫婦間のセックスレスが進む一方で、「配偶者以外の異性と性的関係があっても家庭に迷惑がかからなければかまわない」との回答が、男性では40~50歳代の約4割、女性では約2割に上り、ともに前回調査の2倍以上に増加。実際に配偶者以外の異性と親密な付き合いのある人の割合も、男女ともに倍増した(図2)。