ED
わたしたちはEDに対しては積極的に治療する方針をとっています。もっとおおらかに性のことを語ってよいし、感じてよいと思います。正しい知識は人間を守りますが、HIVなど感染症対策を含めて、性に関する正しい知識を広めることが大切だと思います。
性に関する「科学」はお酒を飲んだりして抑制がとれると、盛んに語られます。中にはとんでもない誤解もあります。フロイトが精神分析で初期の頃から取り組んだのも性の問題でした。性は、暴力、愛、秘密、成長など様々な側面で人間の本質に関連しています。深い人間関係を結ぶ方法でもありますから、人間関係論を含んでいます。性格形成に深く関係しています。人間はまことに「性的存在」であると言えると思います。
EDに対してはカウンセリング、漢方薬、バイアグラ、レビトラなどが有効です。
- 必要に応じて抗不安薬、SSRI、SNRIなどを併用することができます。
- 適切な抗不安薬でリラックスすることができます。体質にあったものを選択します。
- 挿入困難にはバイアグラ・レビトラ + 安定剤も一案です。
- 射精まで勃起維持困難の場合はバイアグラ・レビトラ + SSRI or SNRIも考慮しましょう。
- 伝統的な漢方薬を使用して体質改善もできます。
- カウンセリングが有効です。
EDの定義
「ED」とはErectile Dysfunctionの略で「性交時に十分な勃起が得られず、又は維持できないため、満足な性交が行えない状態」と定義され、日本でも1000万人以上がこの悩みをもつと言われています。 従来使われてきた「インポテンス(性的不能)」という言葉は印象が良くないので、最近は勃起機能低下を指す「ED」を使用します。
EDの原因
まず勃起のメカニズムを理解しましょう。ポイントは、動脈が拡張して血液が流れ込み、静脈が収縮して出口をふさぎ海綿体に血液がたまり、勃起することです。
性的刺激によって興奮が神経に送られると、ペニスにある陰茎海綿動脈が拡張して、海綿体がスポンジのように膨張して固くなり、勃起した状態となります。しかし、何らかの原因によって、その動脈の拡張が不十分な場合、EDとなります。この原因としては、ストレスや喫煙・飲酒の他、糖尿病や高血圧なども大きな原因となります。また、降圧薬、ホルモン剤などを服用中の方も、EDを引きおこす可能性があるので注意が必要です。アルコールは中枢神経を抑制するため、リラックスさせる効果がある反面、勃起能力を低下させることがあります。飲酒には注意が必要です。前立腺ガン・直腸ガン・膀胱ガンの手術に際して神経損傷が起こり、EDになる可能性があります。
最近では20代、30代の男性のEDが増加しています。
バイアグラについて
「バイアグラ」は世界的に有名なファイザー製薬が開発した極めて安全なED治療薬です。日本では、1999年に厚生省から承認されており、使用にあたっては医師の処方が必要となります。バイアグラはEDの原因の一つと考えられている「PDE-5」という酵素の働きを抑える作用があります。服用後30分~1時間くらいで効果が発現し、2~3時間ほど効果が持続します。心臓病などバイアグラを処方できない場合もありますので、よくご相談下さい。
注意事項
- 性的刺激を受けなければ勃起しません。あくまで勃起を補助するものです。
- 食後に服用すると吸収が遅くなり、効果が出現するまでに時間がかかることがあります。空腹時が最も効果的ですが、食後は1時間以上あけて下さい。
- アルコールと一緒に飲んでも大丈夫ですが、アルコールの飲み過ぎは薬の効果を弱めてしまいます。
- 1日1錠まで。服用間隔を24時間以上あけてご使用下さい。
- 胎児への影響はありません。
- ニトログリセリンとの併用は絶対にお止め下さい。
- 頭痛、胸やけ、ほてり、色覚変化がみられる場合がありますが、しばらくすると治ります。
バイアグラ禁忌
- 狭心症や心筋梗塞治療のため、一酸化窒素(NO)供与剤を服用中または服用後の方(ニトログリセリン、亜硝酸アルミ、硝酸イソソルビド等)
- 本剤の成分に対しアレルギー(過敏症)の既往歴のある方
- 心血管系障害を有するなど性行為が不適当と考えられる方
- 低血圧の方(血圧で上が90mmHg未満、下が50mmHg未満)
- 高血圧の方(血圧で上が170mmHg以上、下が100mmHg以上)
- 脳梗塞・脳出血や心筋梗塞の既往歴が最近6ヶ月以内にある方
- 重度の肝障害のある方
- 網膜色素変性症(進行性の夜盲症)の方
以上の場合、使用はおすすめできません。これ以外にも以下を服用中の場合、一応注意が必要とされています。 - チトクロームP4503A4阻害薬(シメチジン、エリスロマイシン、ケトコナゾール、イトラコナゾール、リトナビル、サキナビル等)
- チトクロームP4503A4誘導薬(リファンピシン等)
- 降圧剤(アムロジピン等)
- α遮断薬(ドキサゾシン等)
- 強心薬(カルペリチド等)
レビトラについて
「レビトラ」は世界的に有名な独バイエル社と英グラクソスミスクライン社が共同開発した安全なED治療薬です。ヨーロッパ、アメリカに続き、日本でも2004年に厚生労働省から承認されています。 レビトラは、バイアグラと同様、EDの原因と考えられる「PDE-5」という酵素の働きを抑える作用がありますが、その選択性がより高く効果的といわれています。
バイアグラに比べて、食事の影響を受けにくく即効性があり、長時間効果が持続すると説明されていますが、わたしたちの経験では甲乙つけがたいといった感触です。薬の特性と言うよりは、個人の体質、肝臓の分解酵素の組成などで効果が決まってくるのではないかと思います。さらに、バイアグラ、レビトラは小腸で吸収されますから、腸管の運動も関係します。飲んでから20~30分、または1時間程度で充分な勃起になるようです。レビトラは、バイアグラで十分な効果が得られなかったケースでも有効であり、糖尿病後や前立腺ガン手術後のEDにも有効との報告もされています。ただ、バイアグラに比べて併用禁忌の薬が多いので注意が必要です。強力だが、注意も必要という説明になります。実際には飲んで比べてみないと分からないと思います。
レビトラ禁忌
- 狭心症や心筋梗塞治療のため、一酸化窒素(NO)供与剤を服用中または服用後の方(ニトログリセリン、亜硝酸アルミ、硝酸イソソルビド等)
- 本剤の成分に対しアレルギー(過敏症)の既往歴のある方
- 心血管系障害を有するなど性行為が不適当と考えられる方
- 低血圧の方(血圧で上が90mmHg未満、下が50mmHg未満)
- 高血圧の方(血圧で上が170mmHg以上、下が100mmHg以上)
- 脳梗塞・脳出血や心筋梗塞の既往歴が最近6ヶ月以内にある方
- 重度の肝障害のある方
- 網膜色素変性症(進行性の夜盲症)の方
以上はバイアグラと同じですが、レビトラの場合さらに、
- 抗不整脈薬(キニジン、プロカインアシド、アミオダロン、ソタロール等)
- α遮断薬(ドキサゾシン、テラゾシン、タムスロシン等)
- 抗ウイルス薬・抗真菌薬(リトナビル、インジナビル、アタザナビル、ケトコナゾール、イトラコナゾール等)
これらを服用中の方も使用は控えましょう。
それ以外にも、エリスロマイシン、ピカルタシド、リファンピシン、カルペリチド服用中の方も注意が必要とされています。
和漢薬
伝統的につむら12 柴胡加竜骨牡蛎湯、つむら7 八味地黄丸、つむら41 補中益気湯などを用いています。大柴胡湯、桂枝加竜骨牡蛎湯も勧められますが、わたしたちは上記三種の中で選ぶことが多くなっています。たとえば、消化力が落ちて体力のない人につむら41 補中益気湯、気の欠けている人につむら7 八味地黄丸、神経力の低下した人につむら12 柴胡加竜骨牡蛎湯といったような選択になります。
シアリス
別名『ウィークエンド・ピル』です。
『ウィークエンド・ピル』とは週末に飲んで土日の休み中はいつでも好きなときにという意味合いのようで、服用して30分くらいで効き始めて、一度吸収されれば36時間(丸一日以上)、長時間にわたって作用します。時間を気にしなくていい、自由度の高いED治療薬です。欧米では2003年から販売され、フランス、スペインでは、バイアグラやレビトラをしのぐ、ED治療薬のトップシェアになっています。世界100カ国で1千万人以上に使用されているとされています。
36時間効くといっても、性的刺激があれば勃起するという作用であり、勃起したままになるのではありません。射精すれば勃起は終わります。若い頃のように勃起しやすく持続しやすい状態と考えてください。
シアリスもバイアグラ、レビトラ等と同じく空腹時が吸収がよく早く効くという体質の人もいますし、あまり関係ないという人もいます。自分はどうか、確認しておくとよいでしょう。
シアリスの副作用としては、顔のほてり、鼻づまり、頭痛、消化不良、背部痛、筋肉痛、色覚変化等がありますが、程度は軽く、一時的なものです。