過敏性腸症候群(IBS)
「このごろ下痢でお腹が痛い。トイレに行って出してしまうと落ち着くんだけれど、またお腹が痛くなる。そんなことの繰り返しで、外出もおっくうになってしまう。仕事に支障が出ている。会社ではリストラの話も出ているのに、こんな体調では目をつけられてしまう。胃腸科で調べてもらったけれど、特に悪いところはないといわれた。病名は過敏性腸症候群というそうだ。ストレスに関係する病気で、心療内科に行けば相談できるらしい。」
そんなわけで、過敏性腸症候群の人が心療内科ににいらっしゃいます。
診断
過敏性腸症候群は過敏性大腸症候群と同じものをさしています。診断の手がかりとしては、以下の項目のうち、6つ以上あてはまれば、疑わしいといわれています(川上先生の表をアレンジしてストレス・マネージメント・パワー・グループの考え方を紹介します)。
血液検査やエックス線検査で異常がないことが前提になります。また、お腹の調子以外に自律神経症状がないかどうか、ストレス関連症状がないかどうか、細かく調べることも必要です。
- 子供の頃、腹痛をおこしていた
- 激しい腹痛で、救急で医者に診てもらったことがある
- 以前からときどき腹痛がある
- お腹をあたためると腹痛が軽くなる
- 排便すると腹痛が軽くなる
- 下痢、便秘、ガスがたまるなどで困る
- 排便すると腹痛が起こる
- 腹痛を伴う下痢がある
- 下痢と便秘が交代でおこる
- 下痢と便秘が以前からときどきある
- うさぎの糞のようにころころした便である
- うさぎの糞のようなころころした便が出て腹痛がある
- 便の中に粘液がまじっている
病型として分類すると、1.下痢型、2.便秘型、3.下痢と便秘の交代型、4.ガスがたまってお腹が張るタイプなどがあります。
原因
過敏性腸症候群ではストレスが原因となり、自律神経の異常が発生し、腸に症状が出ると考えられます。
- ストレス‥‥原因の中でもっとも多く、重要なものと考えられています。仕事のストレス、家庭のストレス、学校のストレス、更年期のストレスなどがあり、いくつかのストレス要因が重なっている場合もしばしばあります。
- 性格‥‥神経質な人、気にしやすい人、責任感が強い人、几帳面な人などにおこりやすいようです。もちろんそれ以外の人にもおこります。
- 体質‥‥もともと胃腸が弱い体質の人がいます。遺伝的に胃腸が弱い人もいます。このタイプの人はストレスが胃腸に出やすいようです。
- 食事‥‥暴飲暴食、食欲不振、過量のアルコールなど、心当たりはありませんか?
- 睡眠‥‥睡眠不足はストレスの原因でもあり結果でもあります。
治療
「症状に応じた手当」と、「原因に応じた治療」の二つを考えます。
まず「手当」です。症状は下痢、便秘、ガスなどですから、それらを調整する薬を使いましょう。下剤や下痢止めですね。弱いものから強力なものまで、さまざまあります。ヨーグルトを食べることも勧められます。一日200グラム程度を持続してみて下さい。ヨーグルトにきな粉を混ぜることもしばしば勧められます。これだけですべて解決するわけではありませんが、症状が少しでも緩和されれば、自分の状況についてゆとりを持って見通しよく考えることができるようになります。
「原因」に応じた治療としては次のようなものがあります。
- 充分な睡眠。
ストレスに対抗するために睡眠はとても大切です。睡眠を確保する工夫をしましょう。眠れないときには薬の助けを借りることも検討してみましょう。 - 食事の見直し。
規則正しい食事、バランスのとれた食事内容が大切です。ゆっくり、楽しみながら食事ができていますか? - ストレス解消。
これは言うほど簡単ではありませんね。仕事がストレスと分かっていても、どうしようもない状況で、多くの人は働いています。しかしそれでも、なんとか、現在よりも少しでもしのぎやすくするために、一緒に工夫を考えましょう。瞬間的な大きなストレスも大変な苦しみですが、持続的・慢性的な、耐えられるぎりぎりのストレスも大変苦しいものです。 - 自律訓練法。
短い時間で簡単にできます。何度かトレーニングして身につけて下さい。ストレス・マネジメントの初級編です。 - カウンセリング。
お話の中で自分の置かれた状況を整理してみましょう。話しても何も変わらないとあきらめないで下さい。自分が変われば周囲が変わることもあります。時間を稼いでいるだけでも大きな希望がもてます。時間がたてば少しずつすべてが変わるものです。 - 性格傾向の把握。
心理テストなどを使って自分の性格傾向をつかみましょう。それを生活改善に役立てましょう。 - 薬。
ときに漢方薬や西洋薬で調整して、それが回復のきっかけになることがあります。話し合ってみましょう。