自律神経失調症
自律神経とは
末梢神経には随意神経と自律神経があります。自律神経は交感神経と副交感神経から成り立っています。自律神経の失調状態とは、交感神経と副交感神経の働くタイミングがうまくいかず、バランスが失われた状態をいいます。たとえとして、自動車を思い浮かべて下さい。交感神経はアクセル、副交感神経はブレーキと考えてみましょう。日中の活動中は交感神経が働いています。そのとき副交感神経は休んでいます。寝ている時には副交感神経が働きます。そのとき交感神経は休んでいます。つまり、アクセルを踏む時はブレーキは離し、ブレーキを踏む時にはアクセルは離しています。アクセルとブレーキのタイミングが悪いと、困ったことになります。交感神経と副交感神経が同時に働いたとすれば、アクセルとブレーキを両方同時に踏み込むことになります。これではいくら何でもうまくいきません。このあたりのタイミングの調整については、普通は人間が意識しなくても自動的に行われています。
症状
自律神経はどんな部分の調整をしているのでしょうか。不調になった場合、その症状としてはどのようなものがあるでしょうか?代表的なものを一部分だけあげてみましょう。
- 全身……疲れ易さ、不眠、食欲不振
- 呼吸……息苦しさ、過呼吸発作
- 心臓……動悸(ドキドキ)
- 血液循環……冷え症・ほてり
- 汗……冷や汗、多汗
- 耳……耳鳴り、めまい
- 頭……頭が重い、頭痛
- 精神面……イライラ、ゆううつ、やる気が出ない、不安、緊張、怒りっぽい
- のど……のどのあたりにに何か詰まっている感じ
- 生殖器……インポテンツ
- 筋肉……肩こり
自律神経失調症は、昔から若い女性と更年期の女性に多いといわれてきました。ストレスに悩んでも解消の方法がなかった人たちに多く発生したのでしょう。さらにホルモンの変動が病状を悪化させるわけです。現代では男性も同じです。逃げられないストレスに毎日持続的にさらされていると自律神経の働きが乱れてきて、症状が始まります。
治療はどのようにしますか?
1.まず症状の成り立ちを正確につかむ。
表面に現れている症状が自律神経失調症状であり、その原因が自律神経の乱れであるというところまでは多くの人に共通していますが、乱れの原因についてはさまざまです。
- 生活習慣の乱れ……不規則な食事、栄養の偏り、睡眠時間の不足、不規則な睡眠リズム。これらは生活習慣の乱れとしてまとめることができます。これは自律神経の乱れの原因でもあり、同時に結果でもあります。
- ホルモンを含めた身体状態・体質……更年期障害に代表されるように、ホルモン状態が不安定だと自律神経の調整が乱れてきます。
- 性格傾向……自分をおさえて他人に合わせる人、感情を自由に発散する環境にない人、このタイプの人は適応過剰になりやすく、自律神経症状を呈しやすいことがわかっています。また環境に合わせきれずに、不適応を起こす人も多いものです。このタイプの人は典型的なストレス病を呈します。性格のチェックには面接と心理テストが役立ちます。
- ストレス・過労……性格と関連しますが、ストレス・過労状態を長い間続けていると自律神経が乱れてきます。過労状態では常に緊張を強いられます。しかし緊張状態のままでは充分な食事やよい睡眠が得られません。緊張とリラックスの適度なリズムが必要なのです。慢性ストレス・過労状態は、わたしたちのこころとからだのリズムを奪います。
2.適した治療法を選択する。
- 生活指導(食事、睡眠、運動、人間関係、その他)
- 薬物療法(漢方薬も積極的に活用します)
- 精神療法(カウンセリング)
- 自律訓練法(自分で手軽にできるトレーニングです)
これらの治療法があります。症状の成り立ちがきちんと把握されていれば、治療法の選択も合理的にできます。お気軽にご相談下さい。