パニック障害
最近、新聞・雑誌やテレビで、パニック障害の話をよくみかけるようになりました。みなさまもいろいろな話を聞いていらっしゃることと思います。それに伴って、湘南心療内科にも「パニック障害ではないか」との相談で訪れる方々が増えています。また、かかりつけの一般内科の先生にすすめられて受診する方々も多くなっています。いまでは治療法がほぼ確立しているので、症状はかなりコントロールできます。
最近増えたのだろうか?
昔は、不安神経症、心臓神経症、過呼吸症候群など、さまざまな名前で呼んで、それぞれ別のものと考えていました。しかしこれらは、「不安が非常に高まった状態」が根本で共通していると考えられます。その結果として身体にさまざまな症状があらわれます。根本をとらえて、パニック障害と名付けました。とらえ方が変わったため、増えたように感じられますが、昔から多くありました。
最近はよく効く薬物(特効薬といっていいでしょう)が使われるようになり、さらに自律訓練法や行動療法が効果的であるということが分かって、治療にも希望が持てるようになりました。治療すれば治る病気なので、このことを一般の方にも医療関係者にもよく知ってもらうことが大切になってきました。それで、最近よく目にするようになったわけです。「こころの辞典」でも紹介したように、若い女性に多く、過呼吸症候群をおこして救急車で運ばれる人の数は、東京都で一年に12000人以上との統計があります。決して珍しいものではありません。
どんなときにパニック障害を考えるのでしょうか?
症状の例をあげてみましょう。「激しい不安」が根本で、さまざまな身体症状が伴います。どの身体症状が出るかは、人により場合によりいろいろです。
- 心臓がどきどきする。
- 呼吸が苦しい。
- 息がしにくい。
- のどに何かつまったような感じがする。
- めまいや鳴り、ふらつきがひどい。
- 冷や汗が出る。
- 手足やからだ全体がふるえる。しびれる。
- 一般内科などで身体の検査をしてもはっきりした理由が見つからない。
- 死ぬのではないかと思うほどの恐怖。
- 自分が自分でない感じ。
- 激しい不安。
- 特定の場所・場面が苦手になる。例えば、電車、美容院、歯医者などが代表的。
精神病の一種でしょうか?
いわゆる精神病ではなく、心身症の一つと位置づけられています。ストレスと関連して起こる、ストレス病の一つです。
治るのでしょうか?
大丈夫です。治ります。
原因は何でしょうか?
現在のところ不明です。しかし例えば、乳酸ソーダの話などは参考になるかもしれません。わたしたちが疲れきったとき、筋肉には乳酸ソーダという物質がたまっています。一種の老廃物です。この物質を注射すると、パニック発作が起こるという実験があります。つまり、過労状態の時にパニック発作は起こりやすくなるのです。この他にもいろいろなタイプがあるので、参考程度のことではありますが、「過労状態を避けること」「疲れたら積極的に休むこと」によって、乳酸ソーダを過剰に蓄積させないことが予防になると考えることができます。このような面からも、ストレスをコントロールすることの大切さが分かります。
治療はどうしますか?どのくらいの期間かかりますか?入院は必要ですか?
治療は大きく分けて、薬と薬以外に分けられます。
薬物療法については、特効薬もあり、仕事などを中断することなく、手軽に試すことができるので大変有効です。こみいった話をしなくても、治ることも多くあります。
薬以外では、精神療法、行動療法、認知療法、自律訓練法、生活指導などを組み合わせて用います。
治療の期間は人によりさまざまです。ストレスコントロールが大切なのですが、ストレスをなくするためには仕事や勉強を一部諦めることが必要にもなります。その場合、どの程度妥協できるかが問題になります。多少の不具合をかかえながらも自分の人生にとって大切なことは諦めないように、調整しましょう。パニック障害が始まってからの年月が長い人は治療にも長い期間が必要になる傾向があります。生活に支障がない程度にまで回復することを目標として設定するなら、それほど長くはかかりません。入院はたいていの場合必要ありません。