アルコールと薬剤併用

アルコールと薬剤併用

アルコールと薬剤は同時併用は禁止である。原則禁止ではなく、いつでも禁止と言われている。なぜか、説明する。

アルコールの作用

飲んでいる時の作用と長期にわたる作用に分ける。まず短期・飲酒中の作用について、血中アルコール濃度に応じて次のような状態になるといわれている。厚生省保険医療局1993年より。
  • 0.02%~0.04% 微酔爽快気分 気分さわやか。活発な態度をとる。
  • 0.05~0.1 ほろ酔い初期 ほろ酔い気分。脈拍数、呼吸数がはやくなる。話はなめらかになり、抑制がとれる。
  • 0.11~0.15 ほろ酔い極期(酩酊前期) 気が大きくなり、自己抑制がとれる。立てば少しふらつく。
  • 0.16~0.30 酩酊極期 運動障害が出現する。まともに歩けない(千鳥足)。呼吸促迫。嘔気、嘔吐。
  • 0.31~0.40 泥酔期 歩行困難。転倒すると起きあがれない。意識混濁。言語支離滅裂。
  • 0.41~0.50 昏睡期 昏睡状態。屎尿失禁。呼吸麻痺を来たし死亡する危険大。
長期にわたる作用としては、アルコール性肝障害、アルコール性認知障害、アルコール(依存)症がある。副作用と言うべきか主作用と言うべきかわからない。期待していない作用なので副作用と言いたいが当然起こるものなので副作用という言葉も当たらない。

アルコールの分解

アルコールは体内では肝臓で分解され、三つの経路がある。第一経路=ADH。第二経路=MEOS。第三経路=カタラーゼ。この順に発動して、最終的にアセトアルデヒドになる。アルコール量が少ないと第一経路だけで終わり、量が多いと第二経路、それでも足りないと第三経路が作動する。困ったことに第二経路は作動を繰り返しているうちに酵素活性が上昇しどんどん分解力が高まる。つまり耐性ができて酒に強くなる。

薬剤との関係

アルコールと薬剤は酵素を取り合うのでどちらかの分解が遅れる。アルコールと薬剤はいずれも最初は第一経路で分解される。アルコールを先に飲んで後で薬を飲めばアルコールは分解されるが薬剤は分解しきれずに体内をいつまでも回ることになる。逆の場合はアルコールがいつまでも血中に残ることになる。薬かアルコールかどちらかまたは両者が「効き過ぎ」となる。
アルコールを常用して第二経路の酵素が増えた場合、薬剤の分解も速すぎることになる。薬剤血中濃度は上昇しない、つまり薬が効きにくい。
なお、lorazepam(ワイパックス=ユーパン)、lormetazepam(ロラメット=エバミール)については代謝経路が違うので相互作用についてはやや安心できる。しかしアルコールで酔っている上に薬剤の効果が上乗せされるのは同じであるからやはり併用はやめた方がよい。

つまり、併用禁止です

以上の説明から、要するに、アルコールと薬剤は同じ酵素を取り合うから併用禁止である。それならば、普段から大量飲酒している人は第二経路の酵素が多いのだからある程度は併用しても全部分解できるのではないかと言うかもしれない。しかし個人の体調は完全には予測できない。したがっていつでも禁止である。
厳しい話なので硬く書いた。本当に厳しい話なのである。