「2人に1人ががんになり、3人に1人ががんで死ぬ」時代だと言われる。さらに言えば、国立がん研究センターの最新データでは、男性の場合、生涯でがんを患う人は5人に3人。そもそも保険とは、保険金を受給する人より、掛け金を支払う人が多いことで成り立っているはず。それなのに、がん保険の場合は、がんになって保険金を受け取る確率が50%以上になるはずだ。いくらカネを出し渋っているとはいえ、なぜ儲けられるのか。
ある保険会社で商品開発を担当する男性が、その裏事情を明かす。
「保険商品を発売するには金融庁の許可が必要です。ただし、金融庁が認可する保険料が、契約者にとって妥当かどうかは別問題。金融庁としては、契約者が損するかどうかよりも、保険会社を破綻させないことのほうが重要なんです。金融庁のお墨付きをもらって、確実に儲かる保険商品を作っているということです」
たとえば、2人に1人ががんになるという中で、保険会社は実際には「4人に3人」ががんになる前提で保険を設計する。加入者たちは最初から、そのぶん相当に割高な保険料を毎月支払っているのだ。保険会社のほうは、どこまで行っても損をすることはない。
「2人に1人ががんになる」という数字が独り歩きすることが、テレビCMを打つことよりも大きな宣伝効果を上げているという側面もある。前出の保険会社の商品開発担当者はこう本音をこぼす。
「がんへの不安が広まると同時に、実際にがん患者は増えているのですから、『がんになったけど、保険に入っていたから助かった』という人は、探せば周囲に一人くらいいるはずです。それは加入を検討している人にとって、広告なんかよりずっと説得力がある。自然に販売促進活動につながっている。保険会社にとってはおいしいですね」
「がん保険への加入を検討する人は、その時点で健康への意識が高い人です。これまで保険を売ってきた感覚から言うと、がん保険に入っている人ががんになる確率は、普通の人の5分の1くらいでしょうか。むしろ、代理店としても『がんになりそうにない、健康な顧客を積極的に集める』というのは暗黙の了解になっています」
「年金生活者の場合、がんになっても年金はもらえますから関係ない。60歳以上の人が新たにがん保険に入る必要はないと思います。
高齢者の場合、体に負担のかかる治療はできなくなる可能性もありますし、70歳以降は医療費負担も下がります。高齢者はがんになる確率は高まるけれど、がん保険の必要性は低くなっているわけです。保険料を支払うくらいなら、そのぶんを貯金したほうがいいのではないでしょうか」