予算がないので、原稿料はタダです

“やなせ もともと巨匠になるような才能がないから、
なれるはずもないんです。
そうとう仕事が売れてきてからもですね、
くだらない仕事を頼みに来るんだよね。
でも、考えてみると、
俺は巨匠にならないと決めたんだから、
くだらない仕事であろうとやらなくちゃいけないなと。
それで、おまけにですね、来る人がみんな言うのはね、
タダなんだよ。
「やなせさん、原稿料なしで‥‥」って。
原稿料なしなの。
つまりですね、すごく軽く見られてるんだよ。 
糸井
しかもタダで‥‥。
そういう人だと思われてるんですか。 
やなせ
これも、考えてみると、
自分がそれを望んだわけだから、
いいんじゃないかっていうことなんだけど、
いまだに続いててね。
ぼくはいま、全国で御当地キャラクターをつくる
仕事をやっていて、高知県だけで
もう50を超えてるんですよ。
全国のものを入れると
200ぐらいあるんだよね。
これが、全部、タダ。あっはっは。
ただね、2つぐらいはお金をくれたんだよね。 
糸井
どういう2つなんですか。 
やなせ
役人が4人来たんですよ。
キャラクターを、やなせさん、作って下さいと。
「ああ、キャラクター作るんですか。はい、わかりました」
「ところで、予算がないので、原稿料はタダです」
「えっ、タダですか。私もね、これは仕事でやってるんで、
 いくらかはもらわないと」
って言ったらですね、4人で相談してるの。 
糸井
あらら。 
やなせ
「相談した結果、みんなで相談して、いくらあげます」。
それじゃしょうがねえと思ったんだけど、
やったんです。
それでキャラクターが好評だからって、
着ぐるみつくる予算は出るのにね。
そういうのはパッと払うのに、
俺はタダって言われるのは何でなんだ、
よくわからない。”