PCITは、親子の遊びとしつけにライブコーチングを取り入れたユニークな行動療法であり、親子の関係を強化し、アタッチメントを改善する子ども指向相互交流(CDI)と、後半の親がリードを取って子どもが親の指示に従えるようにする親指向相互交流(PDI)の2段階に分かれている。その主たる治療対象は、「言うことを聞かない」「乱暴」「落ち着かない」「ぐずぐずする」などの行動上の問題を有する原則2歳から7歳までの子ども、及び育児困難に悩む養育者である。治療効果についてはすでに多くのランダム化比較試験からエビデンスが確立し、近年では注意欠陥多動性障害(AD/HD)や自閉症スペクトラム障害(ASD)を持つ子どもの問題行動や虐待を受けた子どもとその親の関係改善、母親のうつ状態の改善研究等でも良好な結果が得られ、その使用は全米からアジア、ヨーロッパにも広がるようになった。
治療の中身についてもう少し詳しく説明しよう。PCITは一貫して遊びを介した「特別な時間 special time」のなかで展開していく。親子の関係改善を主眼とした前半部分であるCDIでは、遊びのリードを子どもがとる中、親(養育者)は命令、質問、批判(Don‘tスキル)の3つを避け、代わりに子どもを具体的にほめる(具体的賞賛)、子どもの言葉を繰り返す(繰り返し)、子どもの遊びを真似する(真似)、子どもの行動を実況中継する(行動の説明)、そして易しいボディタッチや明るい雰囲気などで交流を(楽しむ)という5つのDoスキル(PRIDEスキル)を徹底的に行う。そして、後半のPDIでは、CDIで獲得した親スキルを維持しながら、親はよい命令の出し方を学び、親子は効果的なタイムアウトの手順の獲得を目指す。そしてセラピストは観察室から親子の遊びを同時的に観察し、親の耳に入れられたイヤホンを介して親がこれらのスキルを習得するよう丁寧にライブコーチングを行うのである。
原則毎週1回、1回60分、開始から終了まで早くとも4~6か月はかかる