“いつの間にか、「現実主義」という言葉が肯定的な意味でのみ受け止められるようになり、「理想」について論じることが「所詮はキレイゴトにすぎない」とあざけられるようになってしまいました。そういう人たちに言わせれば、「理想」は「現実」の前では「問題」を「解決」できない無力なものであり、「理想」を求めようとする行為は「現実」から遊離したものであるがゆえに「危険」なのだそうです。しかし、そのように言うときの「現実」という言葉が、あくまで「目の前の『この現実』」だけを指している点に注意を促しておきたいと思います。つまり、そのテの「現実主義」とは、「目の前の『この現実』」を常に「既成事実」として受け取り、それに屈服する態度でしかないということです。それは、「もしかしたら『この現実』とは異なる『現実』が現前していたかもしれない」という思考の可能性をあらかじめ閉ざす態度であり、私の言葉で言えば、「現状追認主義」でしかないということです。例えば「自由」だとか「権利」だとかいう考え方は、「目の前の『この現実』」に屈服しないことによって描き出され、獲得されてきたのではありませんか。”