DSMの考えで言うとこんな感じの分類になる
躁病とうつ病が対称的ではないことが分かる
この図で見ると大うつ病は共通で、上に上がった部分が正常、軽躁病、躁病と分類しているのだが
自然に考えればそれらは連続したものだろうと考えやすい
しかし遺伝研究では違いがあるようで
双極性障害と単極性うつ病は別の遺伝子型であるらしい
それも含めて考えると、
単極性うつ病には遺伝子型としては2つの種類があり、
双極性障害と連続するタイプのものと
双極性障害とは独立のタイプのものとがあり
それは区別できない形で混在しているのだろうと思う
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治らないうつ病とか治らない躁うつ病というものは
元々の概念から言うと異型である
完全に治るから循環病といい躁うつ病と呼んでいた
慢性うつ病という名前で慢性型を指定しているし
それとは別に気分変調症という呼び方でまた別のものを指定している
それとは別にラピッド・サイクリング・タイプを指定している
ここでは気分変調症と慢性うつ病は、
病理として同じで重症度が違うものなのか
あるいはなにか根本的に違うのなのか、問題がある
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残遺型という概念も問題になる
これは昔から観察されていたことではあるが
躁病もうつ病も、反復するうちに完全に元には戻らず、機能欠損を伴うというもので
そもそもの循環病や躁うつ病の理念型とはやや異なる観測で
それは実は欠損を残す点で統合失調症に似ているものである(現在症での類似ではない)
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たとえば分かりやすいかどうか、骨で例えると、
単純な骨折と、カルシウム代謝異常とは、別の経過をたどる
単純な骨折は数カ月を経過して、全く元に戻る
これが躁うつ病タイプである
カルシウム代謝異常、もっと具体的には骨粗鬆症でもいいが、
それは自然に元に戻ることはなくて、骨の脆弱性は徐々に進行して
慢性持続性崩壊性である
これがシゾフレニー・タイプである。
単純な骨折だと思ったのに、なかなか治らない、あるいは機能異常がずっと続くというのは
原則的に話が合わない
単純な骨折ではなかったのだと結論したほうがいいだろう
単純な骨折だけれども、骨の再結合の段階で、曲がったままつながってしまったという場合、
それを機能欠損と観察することは出来るだろう
その場合、不具合は持続する
しかしながらそれは固定性であって、慢性持続性崩壊性ではない
固定した欠損に対して、リハビリが必要である
しかしそれはくっつき方が悪かったというだけで
病理の問題ではない事がわかる
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以上を前提に考えると
「私はずっとうつ病が治らなくて困っている。
診断が間違っていて、『単なるうつ病』ではなく、躁うつ病ではないのか。
治療法が間違っていたのだから、治らないはずだ」という感想は間違いであることが明白である
単極性うつ病でも双極性障害でも、時間が経てばすっかり治るのである
治らないのは治療法が違うからではなく
病理が違うからである
では、どんな病理なのか
それは、慢性持続性崩壊性で感情方面に症状が出るものなのだけれども
疾患というものは長期化慢性化するに連れて
機能欠損により明白に現実の損失が発生するので、それに対して
性格防衛的に反応するわけで、そのあたりを昔は神経症性うつ病とか抑うつ神経症とか名付けていたわけである
上の例で言えば、最初は単純な骨折だったのだけれども、
くっつき方が悪かったので、残遺症状を残している、ということになるだろう
慢性化の病理を性格反応の面で解釈すれば
循環性病理という躁うつ病のもともとの発想を保持しつつ、慢性化を説明できる
はたしてそれでよいものかどうか、はっきり結論が出ていないし
理論も示されていない
統計処理をして綺麗な結果が出ないのは
双極性障害も単極性うつ病も何種類かの病理が混在していて
一部は循環性であり、一部は慢性持続性崩壊性のものなのだろう
病理の面を強く見れば、ブロイラー・タイプの理論になり
現在症の面を強く見ればDSMタイプの理論になるのだろうと思う