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粉雪、細雪はあっても、なごり雪、などという雪も言葉も存在しない。勝手にこんな言葉を作られては日本語の乱れを助長する。『名残の雪』に変えたらどうだとまで言われたんです。
作り手としては『の』はどうしても入れたくなかった。
曲はヒットしましたがモヤモヤは残りました。
あれから40年近くたって気象協会の『季節のことば』に選ばれたと聞き、胸のつかえが下りた気分です」
実は私は、この「新しい季節のことば」を選ぶ側の一人でしたが、選考過程では歌人、国語学者、暦学者など、専門も年齢も様々な委員たちの中に「日本語として問題だ」などと「なごり雪」に異を唱える人はいませんでした。
もしも「正しい日本語を」という圧力に伊勢さんが屈して「名残の雪」になっていたら、ここまで愛される名曲となっていたかどうか。
そう考えると「正しさ」だけを追求するのも窮屈なのでしょうね。
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