イネーブラ イネーブル(enable)

イネーブラというのは、もともとアルコール中毒やギャンブル中毒などの依存症を起こす人の周辺によくいるタイプの人で、具体的な例としては、酒の不始末の尻拭いをする奥さんや、借金の肩代わりをしてしまう家族のこと。イネーブル(enable)というのは、「何かを可能にしてしまう」という意味なのですが、要するに、本来であれば当人がやらなければならない責任を肩代わりしてしまうことで、本人の自覚を妨げ、むしろ本人の問題行動を助長してしまう人のことを言うのですね。
これは子供のしつけを考えてみると分かりやすくて、例えばおもちゃ売り場で子供が「おもちゃ買ってー」と泣き叫んでいるとき。こういうときに絶対にしちゃいけないことは、泣き叫ぶ子供をなだめるためにおもちゃを買い与えてしまうこと。それをしてしまうと、子供は「泣き叫べばおもちゃが買える」という勘違いをするようになって、さらに強く泣き叫ぶようになってしまうという悪循環を引き起こすのですね。こういうときにしなければいけないのは、毅然とした態度を示して、泣いたからといっておもちゃが買えるわけではないということを理解させること、なのですよね。
こうしたイネーブラになりやすいのは、一見すると優しいけれども心が脆弱な、お父さんやお母さんタイプの人。かわいそうな人を見ると放っておけないタイプの人がこのワナに陥りやすいのですが、その背景には、かわいそうな人を見捨てる自分になりたくない、という心の弱さが潜んでいることが少なくない。でも実際には、どんなにかわいそうであっても、本人が解決しなくちゃいけない問題には、他人が絶対に手を出してはいけないのですよね。
こういう話は、子供の例を出すとものすごく当たり前の話としてみんな「そうですよね」と納得するのですが、問題なのは最近、大人であってもこういう子供まがいみたいな人が増えているという点。周囲の人たちからそのことを指摘されると、この同僚のように「はっ」と気付く人も多いのですが、気付けないとこのワナにハマりやすいのですよね。

どんなにかわいそうであっても、本人が解決しなくちゃいけない問題には、他人が絶対に手を出してはいけない