不正防止には奇策は必要なく、科学者として当然の振る舞いを徹底させることに尽きる

「孤立した環境で実験をさせない」「良いデータが出たら慎重に検証する」「研究者は前職の機関や紹介者に確認して採用する」──。
 理工系の雄、東京工業大学。2012年4月以降、一定金額以上の予算がつく全研究計画を対象に、聞き取り調査を実施している。きっかけは、同年初めに発覚した燃料電池開発に絡む学内での研究不正だった。
 驚くべきは、不正の端緒を見つけるために東工大が作成した8項目のチェックリストだ。閉鎖的な研究体制や杜撰なデータ検証といった、STAP細胞研究で糾弾された数々の問題を、そっくり裏返したような内容が並ぶ。
 「不正防止には奇策は必要なく、科学者として当然の振る舞いを徹底させることに尽きる」。東工大理学系長の西森秀稔は、自戒を込めてこう語る。仮に理化学研究所が同じ観点で精査していれば、小保方晴子の不正は未然に防げていただろう。