多剤耐性菌は排水管からシンクへと「よじ登る」可能性
多剤耐性菌を撃退するには、まず病院内の流し台から対策を始める必要があることが、新たな研究で示唆された。細菌は排水管でコロニーを形成し、徐々にシンクに向かって進むことが判明したという。これは入院患者が多剤耐性菌に曝露しうる経路のひとつであると、研究グループは警告している。
これまでの研究では、入院中の患者が多剤耐性菌感染により死亡していることが明らかにされている。32件を超える研究で、最後の切り札となる抗生物質カルバペネムにも耐性をもつ細菌が、流し台をはじめとする病院内の水の溜まる場所を通して拡大していることが記載されていると、研究著者らは説明する。
研究を率いた米バージニア大学准教授Amy Mathers氏は、「われわれは、どのように伝染が起こるのかをさらに詳しく理解し、感染数を減少させたいと考えた」と述べている。
この問題について調査するため、研究チームは実験室内に同一型の流し台を5つ作製し、大腸菌で汚染させた。この流し台は、同大学シャーロッツビル病院の集中治療室にあるものを再現した。大腸菌はヒトの消化管内に生息し、通常は無害だが、有害な遺伝子を獲得して抗生物質耐性をもつことがある。
大腸菌は排水管内にコロニーを形成した後、排水口のストレーナーに向かって1日1インチ(約2.5cm)のペースでゆっくりと増殖していくことが判明した。菌が排水口に到達するまで1週間を要し、その後はすぐに流しの近くのカウンターなど、周囲にはねて広がることがわかった。この研究は「Applied and Environmental Microbiology」オンライン版に2月24日掲載された。
研究グループは現在、米国疾病管理予防センター(CDC)とともに、流し台の細菌が患者まで到達する経路を正確に突き止める研究に取り組んでいる。「細菌がどのように伝染するかを理解し、それ以上の感染を予防するための介入措置を開発、検証できるようにするためには、この種の基礎的研究が必要である」とMathers氏は説明している。(HealthDay News 2017年2月27日)