厚生科学審議会感染症部会薬剤耐性に関する小委員会の作業部会は、抗菌薬の適正使用の手引き案をまとめた。急性気道感染症のうち「かぜ」と呼ばれる症状には、抗菌薬を使用しないことを推奨。「抗菌薬は必要ありません」といった患者が否定的にとらえる説明ではなく、「最初の2-3日がピークでだんだんよくなる」と肯定的な説明を行い、患者の満足度を損なわずに抗菌薬を減らすよう促している。
体内に感受性菌と耐性菌が両方ある通常の状態で抗菌薬を投与した場合、耐性菌のみが残って薬剤耐性を拡大している背景があるため、厚労省は外来診療の現場で、抗菌薬の適正使用に関する意識を高めてもらうことが必要と判断。抗菌薬を投与する機会が多いとみられる急性気道感染症と急性下痢症を取り上げた手引きの作成を小委員会に提案した。これを受けて小委員会は、作業部会で手引きに記載する疾患の特徴や患者への説明方法などを検討していた。
手引き案は、感染症を予防することが抗菌薬の使用を減らすことにつながると指摘。医師らが患者に対し、ワクチン接種や効果が高い手洗いの方法、せきやくしゃみを他人に向けてしないといった「せきエチケット」の重要性を伝えるよう求めている。
また、疾患ごとの医師による具体的な説明方法も盛り込まれている。例えば、成人の急性気管支炎(百日ぜきを除く)に対しては「抗菌薬投与を行わないことを推奨する」と記載。こうした急性気道感染症の大部分は「自然に軽快する」、「良くなるまでには時間がかかる」といった情報を伝える必要性を示している。
このほか、薬剤師から患者への説明方法も記載。抗菌薬が出ていない患者に対し、現時点で抗菌薬が必要でないことや、下痢などの副作用を生じる恐れがあることを説明するよう勧めている。厚労省は、この手引き案を来月に開催が予定されている小委員会に報告する方針。