"「タイヤの溝は一定ピッチで切られていないのを知っていますか」。
学生達は最初きょとんとしていましたが、どのタイヤもじっくり見てみると、少しずつパターンの間隔が変化しているのに気がつきます。全く一定間隔のように見えるパターンでも、離れた場所を見比べると、ひとつのタイヤの中で歴然と間隔が違うのです。「さて、何故このようにピッチを少しずつ変えてあるでしょう」。残念ながらその場に正解者はいませんでした。
ご存じの方もたくさんいると思いますが、正解は耳障りな騒音を出さないための工夫です。一定ピッチで溝が刻まれているとそれぞれのブロックが一定間隔で地面に衝突するため、ある周波数のビーッという明瞭なノイズが発生します。しかし、パターンに変化があると様々なタイミングで衝突するので、全体としてざーっという周波数の幅のあるノイズになります(ホワイトノイズ化)。そうすることによって耳障りな騒音を防いでいるのです。
このノイズ低減方法は結構古い技術のようです。私が大根おろしをデザインするにあたって参考にした、職人技の大根おろしの効率の鍵である、「ランダムさの効用」がここにもありました。
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