堤防に穴が空いていて、そこから川の水が漏れ出しているとするでしょ。それを見ても、「オレには関係ねえ。堤防の管理運営はオレの責任範囲じゃないから」ってそのまま通り過ぎるやつがいる。そのうち堤防が決壊して、街が洪水に沈んでも、その人は誰からも責められない。また別の人がいて、その人は堤防の穴を見つけて「おや、穴が空いてるぞ」って、小石で穴を塞いだとする。おかげで洪水は起きなかった。結果的にこの人は街を救ったんだけど、誰も彼が街を救ったことを知らないし、本人も自分が街を救ったことを知らない。だから、誰からも評価されない。
その人が公共の福利にどれくらい貢献してるのか、誰も知らない。本人もなにか特別なことをした気がしない。ただ、ふつうに床のゴミを拾うような感じで、無意識に堤防の穴を埋めた。友達とおしゃべりしながら、ぼんやり考えごとをしながらでも、身体が自然に動いて「いいこと」をしてしまい、そのおかげで世界が救われた。