「ついに解禁!『最強の勃起薬』ザルティア これは凄すごすぎる」
この春、ザルティアという薬が使えるようになりました。これは、本来は前立腺肥大症の治療薬であり、排尿障害(おしっこの勢いが弱くて困る状態)の患者さんに使用できる薬なのです。
この薬の成分はタダラフィルというもので、勃起障害治療薬としてすでに販売されているシアリスと同じ成分です。PDE5阻害薬という種類の薬なのですが、この成分は勃起障害を改善させる作用だけでなく、排尿障害にも効果があることが分かってきたのです。PDE5阻害薬の作用として、前立腺や膀胱ぼうこうの血流が増加することや、神経的な作用により排尿障害が改善することが知られています。だから、「最強の勃起薬」として新しい薬が登場した訳ではないのです。
実際、勃起障害の治療にはタダラフィルとして20mgもしくは10mgの錠剤が使用されます。今回のザルティアは1日あたり5mgです。1日あたりの内服量は少ないですが、連日使用すれば、成分としては勃起障害治療には十分の量が使用できるかもしれません。
現在、問題となっているのは、その薬の値段です。勃起障害の治療としてシアリス20mgを購入すると自費診療となりますので1錠2,000円前後となります。ただし、ザルティア5mgは1錠230円であり、保険診療として自己負担3割で計算すると、1錠あたりの自己負担は100円以下となります。だから、もしタダラフィル20mgの成分としてザルティアを購入すると自己負担は400円以下で、計算上はずっと安く購入できることになるのです。
つまり、前立腺肥大ではない人が、ED治療薬を安く入手したい、と症状などを偽って前立腺肥大の診断を受け、保険で処方してもらう事態が懸念されているのです。
添付文書では、「適切な検査で診断を確定すること」と明記されていますが、厚生労働省は、4月17日付で、ザルティアの処方について留意事項を全国の地方厚生局などに通知しました。
具体的には、前立腺や残尿などの超音波検査や、尿流量測定など、排尿機能の検査をした上で処方、レセプトという健康保険の書類にこれらの検査をした年月日を記載するというルールです。医療機関や、国保、社会保険などそれぞれの審査支払機関にも周知徹底されれば、不正は難しくなると思います。
週刊誌は、おもしろおかしく書いて雑誌を売る必要があるでしょう。しかし、ザルティアは健康保険が適応となる薬であり、もとをたどればそれは税金にもかかわってきます。これだけ日本人の高齢化が進み、医療費が増加してきているのだから、診察する医療側も、受診する患者側にも「モラル」が求められると思います。現実問題、日本という国は借金だらけなのです。
この週刊誌がザルティアを最強の勃起薬として紹介することにより、結局は国民の皆さんが税金を多く払う必要になるかもしれない…。考え過ぎかもしれませんが、この週刊誌の「モラル」はなんだろうなあ、と考えてしまう一件でした。