最高裁事務総局は、問われれば、「この裁判官たちの人事も定期の普通の異動であって、特段の意図はない」と答えるでしょう。そこに込められた主観的意図を「証明」することは難しい。しかし、少なくとも、「事実」を報道し、それに適切な「評価」を加えることはできるはずです。
自己規制がすぎる
たとえばニューヨーク・タイムズ、ル・モンド、ガーディアンと比較して
大飯原発差止め判決の樋口裁判長
異動は、名古屋地裁ではなく、名古屋家裁です。
そして、この異動は、この裁判長のこれまでの経歴を考えれば、非常に不自然です。地裁裁判長を続けるのが当然のところで、急に家裁に異動になっている。キャリアのこの時期に家裁に異動になる裁判官は、いわゆる「窓際」的な異動の場合が多いのです。また、そういう裁判官については、過去の経歴をみても、あまりぱっとしないことが多いのです。
しかし、樋口裁判長の場合には、そういう経歴ではなく、家裁人事は、「青天の霹靂(へきれき)」的な印象が強いものだと思います。
第一に地裁の裁判の現場から引き離す、第二に見せしめによる全国の裁判官たちへの警告、という2つの意図がうかがわれますね。
ただ、形としては、家裁とはいえ、近くの高裁所在地である名古屋の裁判長への異動ですから、露骨な左遷とまでは言い切りにくいものになっています。
こういうところが、裁判所当局のやり方の、大変「上手」なところだともいえます。また、彼の裁判が非常に注目されている状況で、あまりに露骨な左遷はできなかったという側面もあるでしょう。