五輪主導権争い 先手の小池氏×怒る森氏
産経新聞 9月30日(金)7時55分配信
「IOC(国際オリンピック委員会)の理事会、総会で決まったことをひっくり返すのは極めて難しい」。29日朝、文部科学省で開かれた東京五輪・パラリンピックの調整会議。東京都の調査チームの報告書に言及した小池百合子知事に対し、大会組織委員会の森喜朗会長は不快感を示した。
組織委の武藤敏郎事務総長も、都の影響力の背景となっている都の出資金58億5千万円のうち、57億円を返還する意向を表明した。
森氏は閉会後、別室で待機していた報道陣のもとに自ら歩み寄り、予定にはなかった取材に応じた。「独断専行したら困る」「われわれの立場は東京都の下部組織ではない」。静かな口調ながら約20分間、怒りをぶちまけた。
2カ月近く前の8月9日、知事に就任したばかりの小池氏と森氏は笑顔で握手を交わし、開催費用を削減していく方向で協力していくことで一致した。だが、小池氏は組織委への監督・指導を強め、会計監査に踏み込む手段を選び、次々と先手を打つ。
「出資法人である組織委員会を調査対象といたしました」。8月29日に小池氏は森氏に対して文書で通知し、その後に発足した調査チームが組織委幹部にヒアリングを実施。さらに都の組織委への出資比率が97・5%に及んでいることや、組織委の職員の3割超を都の派遣組が占めることに着目し、水面下でより強い監督権限を持つ「監理団体」になるよう要請した。
関係者によると、森氏の意向を受けた武藤氏が数日前、小池氏と秘密裏に会談して57億円の返還を打診した際、小池氏は「だったら人も返してくれるの?」と突き放したとされる。小池氏に近い都関係者は「組織委から権限を取り戻す」と強調する。
この日の都政改革本部に提出された調査チームの報告書には「組織委は司令塔になりにくい」と明記。座長の上山信一慶応大教授は組織委が最終的に赤字になれば都と国が損失を補填(ほてん)することを踏まえ、「各組織が良い仕事をすればするほど、請求書が全部都庁に回ってくる」と皮肉った。
小池氏は報告書の内容について「組織委がIOCなどとの調整に汗をかいてこられたので総合的に考えていきたい」と述べたが、直後にこう決意を語った。「負の遺産を都民に押しつけるわけにはいかない」
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76年のモントリオール・オリンピックは10億ドルの赤字を出し、20年だったか、30年だったかをかけて、市民が税金でこれを賄った。オリンピックに失敗すれば、そのツケは市民(東京では都民)に回る。
モントリオールの失敗を機に、開催地に名乗りを上げる都市が激減し、オリンピックの危機が叫ばれる時代になると、IOCは立候補都市の言い分をどんどん飲むようになった。オリンピックに商業主義を持ち込んで、大幅な黒字を生み出したロサンゼルスはこのおかげ。