Watsonに対抗–HPEの機械学習「Haven OnDemand」

 Hewlett Packard Enterprise(HPE)は3月に正式提供を開始した機械学習のオンデマンドサービス「Haven onDemand」で機械学習の普及に注力している。同社でソフトウェア事業を統括するRobert Youngjohns氏は「実際に使える技術を提供する」と述べ、IBM Watsonとの競合にも自信を持つ。
 HPEでソフトウェア事業を統括するRobert Youngjohns氏
HPEでソフトウェア事業を統括するRobert Youngjohns氏
 HPEが6月に開催した自社イベント「HPE Discover」での基調講演で、Youngjohn氏は「さまざまな変化がある中、機械学習とディープラーニングは土台からの変化」と述べる。
 土台からの変化とは、具体的にはこうだ。「コンピューティングはビジネスプロセスの定義からスタートして、自動化のためのコードを作成し、関連するデータを保存し……。さまざまなところでデータが生まれている。データから開始して、分析し、その上にビジネスプロセスを作るという新たなパラダイムが生まれている。これは全く新しいアプリケーションの誕生につながる」とYoungjohns氏。
 HPEはこの分野で、リアルタイム分析のVerticaとAutonomyを2011年に買収している。中でも機械学習ではAutonomyの非構造化データ分析「IDOL」を土台としており、Haven onDemandも2014年発表当初「IDOL on Demand」という名称だった。それを”避難所”や”安息所”を意味する「Haven」とリブランディングし、今年3月に商用サービスとした。
 検索、画像認識、予測分析、音声のテキスト変換、地理空間分析などの機能を備え、英語、日本語を含む20の言語モデルをサポートする。簡単に使える知能増幅機能、高度なコンテキスト検索などもあるという。2年近くのベータ期間中に1万6000人以上の開発者が参加しており、どのAPIが使えるか、どのようなユースケースがあるのかなどのフィードバックを得たとHaven onDemandのプロダクトマーケティング担当ディレクター、Julie Choi氏は言う。
 パターン認識、ニューラルネットワークなどの高度な技術を利用する機械学習は、これまで限定された技術だった。「博士号を持つ人、高価なコンサルタント、複雑な技術、特定のユースケース向けに調整されたモデル、これにサーバ、ストレージなどが組み合わさるとても高価なソリューションだった」とYoungjohns氏。「もっと実践的な方法が必要だ。HPEはデータの場所や形式に関係なく、あらゆる開発者がデータを理解して活用できるというアプローチをとる」と述べている。
 Haven OnDemandはクラウドサービスであり、面倒なハードウェア設定作業は不要だ。フリーミアムサービスとして提供され、1万回のAPIコール、1リソースユニットは無料。開発者は登録してすぐに使い始められる。事例として、PhilipsはHaven OnDemandを利用して、エンタープライズサーチアプリケーションを作成しているとのことだ。
 3月に発表した商用版では、Microsoft Azureが土台となった。APIも拡充し、画像、予測分析、異常検知、オーディオファイルのインデックスなどを増やした。また、既存のAPIを組み合わせて新しいAPIを作る「コネクタ」機能も導入。
 ファイルシステムと接続できるコネクタなどがあり、すべての公開ウェブサイトソースとの接続してインデックスを作成するなどのことも可能だという。APIは約60種あるが、これはコネクタとともにHPEが差別化要素としてとらえている部分だ。「IBMとAPIで対決して、勝てると確信している」とYoungjohns氏は述べた。
 
「Haven OnDemand」は60以上のAPIとコネクタを特徴とする。写真は音声認識のAPI画面
 Choi氏はIBMがWatsonで公開しているAPI数をHaven OnDemandははるかに上回ることを指摘し、「数も違うし、機能の深さも違う」とする。一方で、「IBMが膨大な広告を展開してくれたおかげで、市場全体に対する関心が高まった」とも述べた。
 「顧客はデータを収集しており、分析フレームワークもある。これを活用して新しいビジネスプロセスを作りたいと考えている」というYoungjohns氏。機械学習の普及を予言して、次のように語る。
 「約5年もすれば、機械学習とディープラーニングはすべてのワークロードやアプリケーションに加わるだろう。機械学習は技術プラットフォームであり、顧客とエンゲージする部分と重複することはない」。一方で、機械学習やAIが人間に取って代わるものではないという見解も示し、「意思決定プロセスを増強するものであり、われわれはツールを得ることができる。人間の能力を強化するものになるだろう」とした。