東京ガスは売り物にならない土地を高く売り抜けた

豊洲新市場が立つ土地は、もとは東京ガスの工場跡地だった。ガス精製過程で様々な毒物が出る。
 東京都は2001年に豊洲への移転を決定。東京ガスは同年、土地に汚染が残ることを明らかにした。
 2007年に開かれた専門家会議では、基準値の4万3000倍ものベンゼンや860倍ものシアン化合物が測定されたことが明らかになった。
 にもかかわらず2011年に都は土地代金を払ってしまった。汚染を知りながら購入したのである。
 原告団の証拠説明書によれば、東京ガスは汚染対策工事費用100億円と、追加の78億円を支払っているが、そんな金額では極度に汚染された豊洲の浄化は困難だった。
 都が支払った土地代金は1,859億円。だが都はさらに汚染対策費849億円をつぎ込んだ。土地代の半分ほどに当たる。もっと安く買うこともできたはずだ。東京ガスは売り物にならない土地を高く売り抜けたことになる。
 そんな危険きわまりない所に生鮮品の卸売市場を移転させようというのだから、そもそもが無理筋だった。そしてまた先週、嘘が発覚した。
 汚染対策のため4.5メートルの高さの盛り土がしてあるはずの市場建物下が、空洞になり地下水が溜まっているという。共産党都議団が調査して明らかになった。
 都が「盛り土は完了した」として支払ったであろう汚染対策費用はどこへ消えたのか?ますます闇は深まるばかりだ。
 築地市場の移転先はなぜ豊洲でなければいけなかったのか。都はなぜ汚染が分かりながら買収にゴーサインを出したのか?悪いのは役人か、都議会か、知事なのか?疑惑を明らかにするには、当時のトップ、石原慎太郎氏に証人台に立ってもらうしかない。
 9月8日の公判後集会で、原告団の代理人弁護士は「今年度末(来年2月か3月)には証人として石原元知事を呼びたい」と語った。
 豊洲から築地までは橋をかければ一本道。銀座の隣に位置する築地は、デベロッパーにとってはノドから手が出るほど欲しい都心最後の一等地だ。