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食べ物を通じて、我々は自然とつながっている
「作物はそれだけで育つことはない」と宇根さんは語る。稲ならカエルを、キャベツならモンシロチョウを、ニンジンなら黄アゲハを、イチゴならミツバチを同伴してる。
カエルは、オタマジャクシの頃には田んぼの中で枯れ草や藻などの有機物を食べて分解し、稲が吸収しやすい栄養分に変える。カエルに育つと、ツマグロヨコバイやゾウムシなどの害虫を食べる。
モンシロチョウはキャベツの葉に卵を産み、それが青虫になるとキャベツの葉を食べて育つ。そしてモンシロチョウになると、キャベツの受粉を助けて恩返しをする。同様に黄アゲハはニンジン、ミツバチはイチゴの受粉を助ける。
宇根さんの講演を聞いたある若い母親は、こんな手紙を出した。
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今まで、アゲハチョウは自然に育っているとばかり思っていました。ニンジンの葉を食べて育っていたなんて、本当に驚きでした。
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この母親には離乳食を与えている子供がいるが、その子がニンジンを食べなくて困っていた。そこで、こう語りかけながら、食べさせるようにした。
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あのね、このニンジンはアゲハチョウの幼虫さんも食べているニンジンなのよ。あなたもお母さんも、そしてアゲハチョウもこのニンジンを食べて育っていくのよ。
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こう語りかけると、その子は次第にニンジンを食べるようになっていったという。
食べ物というと、我々はとかくカロリーとか、鮮度や味、安全性、価格などという科学的、経済的な面からとらえがちだが、食べ物を通じて、我々は自然とつながっている、という感覚を忘れてはならない。そして食べ物によって我々を自然とつなげてくれているのが、農業なのだ。