ちびまる子ちゃん

 今月10日に放送されたTVアニメ『ちびまる子ちゃん』(フジテレビ系)が、「普通に感動した」「すごくほっこりする」「( ;∀;) イイハナシダナー」「なんか不思議な涙が流れる感じ」「俺のさきこが可愛すぎた」「久しぶりに見たらめっちゃ良い話やった」と、神回だったと大反響となっているようなので、話題の『ちびまる子ちゃん』第1060話をレビュー!!
 この回では『まる子、金運が欲しい』の巻と、『父と娘の日曜日』の巻が放送された。前半放送された『まる子、金運が欲しい』では、お金にがめついまる子が、最終的に散々な目にあうというハチャメチャな“らしい”物語で、視聴者を笑わせてくれた。そして後半の『父と娘の日曜日』は、前半とは打って変わって静かな展開で、視聴者を温かい雰囲気に包んだのだ。
 とある日曜日の朝。姉・さきこがお出かけの身支度を整えているところに、ダラダラとまる子が起きてきた。咳をしているまる子をみて、さきこはまる子のおでこに手を当て、熱があることを知る。しかし、母親も祖父母もこの日は出かけており、家にいるのは父・ひろしだけ。
 とりあえず二人でまる子を看病し布団に寝させると、まる子はここぞとばかりに「栄養のあるものを食べたい」「ハンバーグとかさ」とおねだり。ひろしは「おかゆで我慢しろ」と説得するも、さきこはまる子の願いを聞き入れた。友達と出かける予定もキャンセルして、ひろしとともにハンバーグ作りを開始。上手にできたハンバーグをまる子は大喜びでたいらげ、体調も回復しだす。だがさきこはまだ安静にと、まる子をもう一度寝かしつけた。
 ひと段落し、ひろしはさきこに「何だったら今からでも出かけてこいよ」と促すも、さきこはひろしのぐーたらっぷりを見て頼りなく思えたのか、「いいわよ」と家に残ることを決めたのだった。いつも6人の家族が集まっている居間には、さきことひろしの二人きり。
 ここからしばし沈黙が続き、さきこはおもむろに「まる子ね、昨日暑いからってお布団かけずに寝たんだって」とひろしに話しかける。これに対しひろしは新聞を読みながら「へぇー」と返すのみ。「それがいけなかったのかしらねえ」と会話を広げようとするさきこに、ひろしは「さあな」と返すだけだった。会話が終了した居間には時計の音が鳴り響く。
 さきこはもう一度ひろしに「昨日さ、よし子さんと図書館行ったんだけど、新しい本がいっぱい入ってたの。よし子さんね3冊も借りたんだよ。貸し出し期間一週間なのに読めるかしら」と笑顔で話しかけてみた。しかしまた、ひろしは新聞を読みながら「さあな」と返すのみ。さきこはがっかりした様子で、こんなとき母親だったら会話が弾むのになんて考え始める。そんな時に今度はひろしからさきこに話かける。「3時から秀樹が出るぞ」とさきこの好きな秀樹の出演する番組を教えたのだ。これをきっかけに今度はさきこが、ひろしの好きな裕次郎の話を振ったりと初めて会話が弾んだ。
 そんなときにやってきたのが、町内会の集金。お金を持っていないひろしは、小学生のさきこに払ってくれるようにお願い。これにはさきこもドン引きで、さっき少し上がったひろしの評価もガタ落ちするのだった。その後も、お金を探しているときにタバコを発見し「ヒヒヒ、ラッキー」なんて言ってるひろしにさきこは呆れるばかり。
 そうこうしているうちに母親・すみれが帰宅。すみれは家にいるひろしを見て「あら?お父さん野球は?」「草野球でピッチャーするんだって張り切ってたじゃない」と話し出した。さきこも「えっそうなのお父さん」と驚きの表情。どうやらひろしは遊びの約束があったようなのだ。しかしこれにひろしは「さあ、どうだったかなー」としらばっくれ、予定をキャンセルしたことを子供に悟られないようにしたのだ。
 そんなひろしを見てさきこは満面の笑み。思い返すと、ひろしは自分だけがまる子の看病に家に残り、さきこに遊びに行くように促したりなど、ぐーたらしているように見えるが、さきこに気を使い続けていたのだ。さきこは自分がひろしとまる子の面倒を見ていた気になっていたのだが、実はひろしに面倒を見られていたのだった。
 この脚本を書いたのは、以前にも構成が素晴らしいと絶賛された神回を手がけた(記事参照)髙橋幹子氏。いつもと一味違う『ちびまる子ちゃん』を見せてくれる髙橋氏の脚本は、長く続く国民的アニメの良いアクセントとなっているようだ。