子どものためのPFA 被災した子どもたちに心理的応急処置(PFA: Psychological First Aid)

熊本地震で被災された皆さまや、被災地で支援活動をする皆さまへ
~子どものための心理的応急処置(PFA: Psychological First Aid)のご紹介~
4月14日に熊本県で発生した地震の被害に遭われた方々へ、心よりお見舞い申し上げます。
今回の地震のような危機的な出来事に直面した子どもたちが不安を抱えたり、いつもと違った反応を示すことは自然なことです。強いストレスを抱えると、泣き叫ぶ子どももいる一方、感情を全く示さなくなる子どももいます。反応は子どもによってさまざまですが、共通して言えるのは安定した大人がそばにいることが大切だということ。子どもたちが少しずつ、自分たちのペースで落ち着きを戻せるために、PFAの手法でサポートしてください。
 はじめに・・・
子どものためのPFAは、被災した子どもたちに対し
●おしつけがましくない、実際に役立つケアや支援を提供します
●ニーズや心配事の確認を行います
●水や食料、住居など、基本的ニーズの援助を可能にします
●安心させ、落ち着けるよう手助けをします
●被災した子どもたちに、情報や公共サービス、社会的支援をつなぎます
●さらなる危害から保護します
PFAとは
●専門家にしかできないものではありません
●専門家が行うカウンセリングではありません
● 臨床もしくは精神科医療の介入ではありません
●「心理的ディブリーフィング」(つらい出来事について詳しく話しをしていくもの)ではありません
●何が起こったのかを分析させたり、起きた事を時系列に並べさせたりするものではありません
●無理に話を聞き出すものではありません
●被災者が語るのを聞くことはあっても、感情や反応を聞き出すものではありません
危機的状況下で子どもが示す反応
災害時のストレス下にある全ての年齢の子どもたちが示す一般的な反応
●再度同じようなことが起きるのではないかという不安を示す
●自分の大切な人や自分自身が傷ついたり、離れ離れになってしまうのではないかと不安になる
●破壊された自分の地域(地元)を見て反応を示す
●家族やきょうだいと離れることに反応を示す
●不眠になる
●泣く
強い反応を示しやすい子どもとは・・・
●親や養育者と離ればなれになっている
●親しい人や他者が、負傷する現場を見た
●負傷している
●怯えている様子がある
●親や養育者が悲しんだり不安そうにしているのを見て、同様に心配し不安になっている
●周りの人が亡くなっているのに、自分は生きているということに対する罪悪感を抱いている
明らかにストレスを抱えているサインがある子どもは・・・
●震え、頭痛、食欲不振、痛みなど、不快感を伴う身体的な症状がある
●泣くことが多い
●取り乱したり、パニックになる
●攻撃的で他者を傷つけようとする(叩く、蹴る、噛むなど)
●養育者からずっと離れない
●混乱し適応ができない
●動かない、もしくはほとんど動かない、引きこもっている、とても静かになる
●他者がいると隠れたり、恥ずかしがったりする
●他の人に反応しない、まったく話さない
●とても怖がる
*年齢や発達段階、他者(特に親や養育者)の反応、これまでの経験、虐待や家庭内の暴力・ネグレクトなどの過去の経験などの要因も、子どもの反応に関係します。
PFAの行動原則
Look(見る)⇒Listen(聴く)⇒Link(つなぐ)
① 安全確認を行う
周辺を良く観察し、損傷した道路、崩壊する恐れのある建物、火事や洪水の危険がないか等、潜在的な危険性に注意をすることが必要です。また、常に皆さん自身の安全を確認するようにしてください。
 
② 明らかに緊急の対応(基本的ニーズ)を必要としていたる子どもがいないか探す
●重傷を負い、緊急医療救助を必要としている子どもやその家族はいないか?
●雨風をしのぐ場所や破れた衣類の替え等、基本的なニーズをすぐに満たす必要のある子どもやその家族はいないか?
●差別や暴力から保護されるための基本的なサービスや特別なケアを必要としている子どもやその家族はいないか?
 
【注】皆さんの周りで支援ができる人を探して下さい。自分の役割を理解し、特別な支援やただちに基本的ニーズを満たす必要がある子どもやその家族を助けられる人を見つけましょう。例えば、子どもやその親・養育者が大けがをしている場合は、医療従事者やけがの応急処置を施す訓練を受けているスタッフ等に救助を依頼してください。
 
①  支援が必要と思われる子どもや親、養育者に寄り添う
② 子どもや親、養育者のニーズや心配事について尋ねる
ストレスを抱えた子どもやその家族と初めて接する際は、まず今のニーズや心配事についてたずねます。ただ、子どもは、ストレスを抱えていても、今何が必要なのかについて説明することが難しい場合もある、ということに注意しましょう。
③ 子どもや親、養育者の話に耳を傾け、気持ちを落ち着かせる手助けをする
子どもや親、養育者が出来事について話したがっている場合には、耳を傾けますが、話すことを無理強いしないでください。自分が子どもの話を聞いていて、少し苦しい、しんどいなどと感じたら、他にその子どもの話を聞けそうな方へつないでください。
 
① 子どもや家族の基本的ニーズが満たされ、適切なサービスが受けられるよう手伝う
●基本的ニーズとは、食料、水、避難場所、衛生な環境などのことです。
●特別なニーズには医療、衣服、幼い子どもに食事を与えるためのコップや哺乳瓶などがあります。こうしたニーズを満たすことができる場所や人に、子どもやその家族をつなぐようにしてください。
② 子どもや家族が自分たちの力で問題を対処できるよう手伝う
③ 情報を提供する
●ストレスをもたらす出来事が起きた際、一番つらいことのひとつは、自分自身や大切な人の安全や健康状態について不安を抱えたり、心配したりすることです。子どもやその親・養育者の多くは次のことについて情報を求めます。

)出来事、2)影響を受けた大切な人びと、3)自分たちの安全、4)自分たちの権利、5)必要な援助や物資を得る方法
●できる限り正確な情報を伝えるため、次のことを行って下さい
1)正確な情報はどこで得られるのか、最新情報はいつ、どこで得られるのか調べる
2)人びとへの支援を始める前に、できるだけ多くの情報を収集する
3)危機の状況、安全性、受けられるサービス、行方不明者や負傷者の居場所や状況について、最新の情報を得るようにする
4)緊急避難、公共サービスの再開などのこれからの計画が、人びとに確実に伝わっているようにする
5)医療や家族の捜索、避難場所、食料配給などのサービスがある場合、人びとがそのことを知っていて、利用できるようにする。また、必要に応じて、サービスを受けるための問い合わせ先を被災者に伝える、もしくは直接紹介する。
●子どもやその家族に情報を提供するときは、次のようなことに注意をしてください。
1)提供する情報の出所と、どれほど信頼できるものかを必ず説明する
2)自分が知っていることだけを伝え、思いつきや気休めを言わない。
3)いつも簡潔で正確なメッセージを心がけ、それを繰り返し、誰もがその情報を聞いて理解していることを確認する。
4)同じ内容を全員が聞けるように、子どもやその家族に集まってもらって情報を伝えるのもよい
5)これからも事態の進展について最新情報を伝えていくつもりであれば、そのことを知らせる。いつ、どこで伝えるのかも知らせる
④ 子どもとその家族を社会的支援へとつなぐ
 
⑤子どもやその親・養育者に支援を約束した場合は、必ずフォローアップを行ってください。
自分がボランティアなどで、短期間被災地に入る場合は、継続的に支援できる人や機関につないでください。
 
さいごに・・・
 
子どもたちの日常生活のルーティンをできるだけ保ってあげてください。
遊びたい子どもたちがいれば、安心して遊べる機会や場所をつくってください。特に、年齢の低い子どもたちは、遊びの中で起きた出来事(例えば、地震ごっこなど)を表現することもありますが、それは止めずにそのまま遊ばせてあげてください。遊びの中で経験や感情を表すことは、子どもの自然なストレス対処方法の一つでもあります。
 
子どもの中には、自分だけでは上手く対処できず、さらなる支援を必要とする子どももいるでしょう。さらに専門的な支援が必要となる子どもは、例えば次のような子どもたちです。
●依然として強いストレスを抱えている
●人格や行動に大きな変化が起き、それが継続している
●日常生活に支障をきたしている
●自分自身や他者を傷つけるリスクがある
こういった子どもたちは、専門家へつなぎましょう
 
避難所などで見かける専門家は、医師、保健師、看護師、臨床心理士、精神保健福祉士などが多いと思います。とにかく、少し気になるなと思った子どもは自分だけで対応せず、専門家へつなぐことが大切です。
あくまでもできる範囲で支援をしましょう。
 
下のサイトでも情報が取得できます。
災害時こころの情報支援センター
http://saigai-kokoro.ncnp.go.jp/support/index.html