普通、私たちは、自分自身を自分で評価しています。「私はおとなしい性格だ」とか「整理整頓が上手だ」とか、「料理が得意だ」といった具合です。心理学では外から自分を見ている自分によって、自分自身に評価を下すことを、「メタ認知」と呼びます。
そして、メタ認知には二つの大事な働きがあります。
一つは、自己評価の働きです。自分自身についての気付き・評価のことで、いわば内省です。
二つ目はコントロール機能です。これは、自己評価の結果を踏まえて、目標の修正をしたり、新たな目標を設定したりすることです。
このメタ認知は脳の中でも前頭葉の前の方(前頭前野)を中心とした働きです。この前頭前野は脳のその他の部分(頭頂葉、側頭葉、後頭葉)とそれぞれ密接な連絡路を持っており、必要に応じてこれらの部分と情報を交換して、協調して働いています。
脳外傷によって、前頭前野が損傷されるとメタ認知が働かなくなってしまいます。そのため、端から見ていると物忘れがひどいのに、「自分は記憶力が低下している」という自覚がありません。自分は普通だと思っているのに、「記憶力が悪いので病院へ行こう」と言われても、身に覚えの無いことを言われるのですから、驚き、反発するのも無理がありません。