セルアセンブリ仮説 PTSD(心的外傷後ストレス障害)

"1949年にカナダの神経生理学者ヘッブが記憶というのは脳内の「ニューロン(神経細胞)の集団の組み合わせ」で蓄えられるという仮説を提唱していました。この説は「セルアセンブリ仮説」と言われています。

セルは「細胞」、アセンブリは「集まり」という意味です。ある情報Aが脳に入ってくると、たとえば、「10個のニューロンのセット」に記憶として蓄えられるという考えです。何らかのきっかけで、この10個のニューロンのセットが活動すると記憶を「思い出す」ことになり、このニューロンのセットが活動しなくなると「忘れる」という考えです。発表当時からこの説は正しいと考えられてきましたが、証拠がありませんでした。

しかし、昨年(2012)63年ぶりにこの「セルアセンブリ仮説」が正しいことが、ネズミの海馬で証明されました。すなわち、先程の例で説明しますと、「情報Aが脳に入ってきた時に活動する10個のニューロンのセット」を見つけ出す方法が発見され、このセットを壊すと情報Aの記憶が消え、このセットを刺激すると情報Aの記憶を思い出すことが証明されました。このように、ネズミにおいては海馬での記憶をある程度、操作できるようになっています。

PTSD(心的外傷後ストレス障害)という障害があります。これは恐ろしいトラウマ体験から精神的な外傷を受けたことにより、恐怖や無力感、戦慄など強い感情的な反応が症状として現れ、長期にわたって持続する障害です。先程のネズミの海馬における記憶の消滅や再現実験を人に応用して、PTSDのきっかけになっている記憶を消せば治療できるのではないかという研究も始まっています。"