“ポケッタブルラジオは、欧米で大ヒットした初の日本製家電となった。
さて、この日本製小型ラジオだが、よろこんで買ったのはYシャツを来た大人たちではなかった。大人たちは、一流企業の真空管ラジオを買えたからである。図体はでかくて高いが、長年、品質向上の進んだ真空館ラジオは音がよかったし、リビングのラジオは当時、家族のための買い物だった。
Sonyのポケットラジオに飛びついたのはティーンズたちだ。
彼らはずっと、自分だけのラジオが欲しくてたまらなかった。一人で、どうしても聴きたい音楽があった。ロックンロールだ。だが、居間にデンと構える真空館ラジオではロックンロールは聴きたくても聴けなかった。親が嫌ったからである。
Sonyのトランジスタラジオは、ロックンロールを聴きたいティーンズにとって、救世主のような製品だったのだ。
ロックンロールとラジオDJ。そしてティーンズがレコード産業の黄金時代を再来させた。
もう、おわかりだろう。ロックンロールのブームは真空管ラジオでは起こし得なかったものだ。真空管ラジオは、ティーンズが自分の部屋用に買える値段とサイズではなかった。
ラジオから流れるロックを渇望するティーンズ。ラジオを買えなかった彼ら非消費者を、消費者に変えた「新市場型の破壊的イノヴェーション」。それが井深のトランジスタ・ラジオだった。
Sonyのトランジスタ・ラジオはハードウェアの側面からロックンロールの時代を開き、レコ