“ある雑誌のインタビューで梶原一騎は語っていました。
(雑誌名は失念)
“巨人の星”のテーマは、
「いくら努力しても報われない人間はいる」
なのだと。
“巨人の星”の主張は、
「努力しても報われないことの方が多いのに、
努力を強いる価値観が支配的なのは不条理」
なのだと。
彼は人間の苦闘と苦悩を背負わせるべく生み出した
主人公に「ヒューマン」をもじって「飛雄馬」と
名付けました。
貧しい生い立ちを克服し野球選手となった飛雄馬は
しかし、さらに生まれ持った欠点「質の軽さ」に
挫折し、それを克服するために生み出した魔球は
“生い立ちと才能に恵まれた”花形に打たれ、
おなじく”貧しい生い立ち”の左門に打たれ、
さらには”肉親と友人”である父と伴に打たれます。
積み重ねた苦闘のすえに野球のできない体になった
飛雄馬は最後に”母”の代わりであった「明子ねえちゃん」
までもを”生い立ちと才能に恵まれた”花形にとられ
消息不明となり原作は終わります。
このような結末になったのは
「原作者が連載に疲弊して錯乱した」わけでも
「出版社と軋轢が生じて連載を投げ出した」わけでも
ありません。
「原作者が作品のテーマに沿って意図通り」に
そうしたのです。”