“ 冬の夜になると、ネコは鼻先でつんっとフトンを押し上げて入ってくる。毎年思うのだけど、ネコは不思議な生き物だ。  人間というのは横になると、両手の間、脇の下から足の間にどうしてもちょっとした空間が出来る。ネコはその隙間にすっぽりと、まるで測ったようにぴったりと挟まる。まるで、僕という人間の足りない部分を埋めてくれるかのようだ。僕は冬が来るたびに、倉橋由美子の訳したあの童話の、自分のかけらを探して転がり続ける丸い玉になったような気分になる。 ”

冬の夜になると、ネコは鼻先でつんっとフトンを押し上げて入ってくる。毎年思うのだけど、ネコは不思議な生き物だ。
 人間というのは横になると、両手の間、脇の下から足の間にどうしてもちょっとした空間が出来る。ネコはその隙間にすっぽりと、まるで測ったようにぴったりと挟まる。まるで、僕という人間の足りない部分を埋めてくれるかのようだ。僕は冬が来るたびに、倉橋由美子の訳したあの童話の、自分のかけらを探して転がり続ける丸い玉になったような気分になる。