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日本では稀な「足で調べてまわるジャーナリスト」半藤一利は、編集者としては司馬遼太郎を世の中に送り出したことで有名だが、すぐれた記者で、例えばイギリスびいきであったはずの帝国海軍将校たちが、なぜある時期を境にドイツとの同盟に積極的に動きだしたかについて、疑問をもって、
何十人もの元海軍将校にインタビューを重ねて、ついにドイツ側に若くて美しい女のひとびとを「あてがわれた」からであることを聞き出すことに成功する。
ナチが外交戦術のひとつとして、各国の外交官や武官、首脳クラスに至るまで上流階級の夫人や娘に仕立てた高級娼婦をおおぜい抱えていたのは欧州ではよく知られた事実で、現実の歴史の常として、公開されうるような資料はなくても、日本に対しても同じ戦略をつかったのは、容易に想像されて、
ぬわるほどー、な感じがする。
ドイツで「いい思いをして」祖国を大惨禍に引き込んだ海軍将校達は、多分、なにが彼を変心させたか死ぬまで言わないままこの世を去っていたのだとおもわれる。
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