これからどうなる安保法 (1)米要望通り法制化
2015年9月22日 東京新聞
他国を武力で守る集団的自衛権の行使容認を中心とした安全保障関連法が、多くの国民が反対する中で成立した。「戦えない国」を貫いてきた日本を「戦える国」に変質させる安保法の下、自衛隊の活動はどう変わるのか。国民にはどう影響し、日本はどこへ向かうのか。さまざまな角度から考える。
「この夏までに成就させる」。安倍晋三首相は五カ月前の訪米中、米議会での演説で安保法成立を約束した。まだ法案を閣議決定する前で、国民も国会も内容を知らない段階だった。
だが、集団的自衛権の行使容認を含む安保法の内容は五カ月前どころか三年前に予想できた。米国の超党派の日本専門家が二〇一二年にまとめた「アーミテージ・ナイ報告書」だ。
アーミテージ元国務副長官、ナイ元国防次官補らが共同執筆し、日本に安保法の制定を求めていた。両氏は、一般に「知日派」と訳される「ジャパン・ハンドラー」の代表格。報告書の影響力からすれば、文字通り「日本を操っている」ようにも映る。
報告書は日本に米国との同盟強化を迫り、日本が集団的自衛権を行使できないことを「日米同盟の障害となっている」と断じた。
自衛隊の活動範囲の拡大や中東・ホルムズ海峡での機雷掃海も求め、南シナ海での警戒監視活動の実施も要求。国連平和維持活動(PKO)でも、離れた場所で襲撃された他国部隊などを武器を使って助ける「駆け付け警護」の任務追加の必要性を強調した。かなり具体的な内容だ。
これらの方向性は、ほぼ安保法に網羅され、首相は集団的自衛権行使の事例として、ホルムズ海峡での機雷掃海にこだわり続けた。防衛省は安保法の成立前から、南スーダンでPKOを続ける自衛隊に駆け付け警護の任務を追加することや、南シナ海での警戒監視活動の検討を始めた。
報告書では、情報保全の向上や武器輸出三原則の見直し、原発の再稼働にも言及。特定秘密保護法の制定、武器輸出の原則解禁、原発再稼働方針に重なる。安倍政権は一二年の発足以降、これらすべての政策を手がけてきた。
「(安倍政権の政策は)そっくりそのままだ。こういうのを完全コピー、『完コピ』と言う。すべて米国の要求通りに行っている。独立国家と呼べるのか」
生活の党の山本太郎共同代表は安保法の参院審議で政権の姿勢を批判した。
首相は安保法の運用に関し「政策は日本が主体的に判断し、米国の言いなりになるものではない」と説明。同時に「日米同盟が完全に機能することで抑止力が高まる」とも強調する。