精神病デッサン

1.病気とは何か、苦痛とは何か
病理標本
個人の苦痛
社会の苦痛

2.状態像は診断の決め手にならない
その点でDSMは破綻している
しかし現状では他の方法がないので仕方なく使用する

3.病理の本質はときに「時間経過 Temporal Profile」に現れる
だから経過をもとにして
シゾフレニーとバイポーラーを区別した

変性疾患ならば慢性
脳血管障害は急性
など

ストレスに対して急激に反応したものの場合と
慢性に進展したものとではやはり病理に違いがあると思う

ヘベフレニーの場合は
遺伝子の要素と時間要素、つまり主には性ホルモン要素が関係して起こるのだろう
しかし発症には急激なストレスが関係しているようでもあり、
その点ではストレス反応性の要素がある

うつ病の場合には昔から
反応性うつ病と内因性うつ病(メランコリー型うつ病)を区別していた
人間の一般の経験から言っても、
失恋や肉親との死別などで悲哀反応が生じ、その延長に反応性うつ病があるだろうとするのは
無理のない推論である
遺伝子の性質と、悲哀の強さや性質によって、抑うつ反応が生じるだろう

内因性うつ病は多分特に原因なく着々と遺伝子レベルで準備されるものだろう
そして生活の中のストレスが最終的には引き金を引くようにみえる
うまくいけば引き金を引かないで済むだろう

女性の場合に感情病が多いのは性ホルモンのバーストがあるからだろう

4.いくつかの例で経験したが
最初はうつ病のようで
次に躁病を呈し
次には妄想状態で統合失調症状態を呈していた
これは何病と分類すべきなのか

5.カテゴリー診断とディメンション診断
原因が分かっていて、鑑別点もわかっている時、カテゴリー診断が有効である
たとえば、口唇ヘルペスと白癬症
ともに皮膚疾患であるが違いはある
それがカテゴリー診断になる

対策は病原物質に対して対策することである

原因がはっきりしない場合は
症状を詳しく記載して、経過を詳しく記載する
赤みは、熱は、かゆみ、痛み、炎症反応、滲出液の性質、かさぶたの性質など

そしてそれぞれに対して、症状ごとに対処するのも悪くない
痒みを取れば楽になるし、熱が取れれば楽になる(それは免疫反応の抑制だから良くないという意見はあるけれども)

そもそもの原因が不明なのだから
症状ごとに対処するしかないだろう

セロトニンの薬といっても純粋にセロトニン薬でもないのだけれど

症状をひとつひとつ確認しながら対応する薬を選んでいくしかない

単剤で対応できると確信するのはどういう神経なのだろう

6.ディメンション診断はとりあえず測定できるものを参考にしようということで良いことだ
たとえばパーソナリティの問題などは現在のカテゴリーごとに重なりもあるので
ディメンションごとに細かく記載しておけば良いと思われる

7.葛藤モデル
ここ何十年かの間、アメリカの精神医学は葛藤モデルを抹消しようとしてきた。
つまり神経症を抹消しようとしてきた。

しかし抑圧にしろ、アンビバレンスにしろ、直感的に分かりやすいし、個人の経験ともダイレクトにつながっているので、こうした概念の余韻は消えない。

身体表現性障害や急性ストレス反応、慢性ストレス反応などはやはり理解しやすい。
神経症性うつ病、抑うつ神経症、この系列の処理を
ディスチミアと全般性不安障害などで吸収しようとしているが
葛藤モデルが透けて見えている

8.現実神経症
この概念も昔のものだけれど、
過去の葛藤体験が現在の症状になっているタイプと、
現在の現実の葛藤が現在の症状になっているものとは
やはり違いがあるし、違いを考えてもいいのだろうと思う

あの上司は嫌だけれども、仕事はしなければならない、という場合
うつ病の一つのタイプなどというのだが、葛藤が明白である

9.施設や制度が「作る」病気
施設や制度があるから、それを当てにして、「症状」が「発生」する
昔は兵役逃れの戦争神経症があった
今も同じ

10.双極性と単極性うつ病の関係
躁病とうつ病の関係も色々な考え方がある
躁病の後にうつ病が発生するのは、精神病後うつ病と同様で説明しやすい
うつ病を躁病がゼロの、双極性の一つのタイプとするのは、理念的には整合性があるが、実は根拠がない
遺伝研究では単極性うつ病は双極性と別の群だろうと言われている

躁病とうつ病は別の病気だと言っていい場合もあるのかもしれない

あまりいい例えではないが
皮膚の免疫が弱い人や清潔習慣のない人はヘルペスにも白癬菌症にもなる
ヘルペスと白癬菌が交代するような印象を与える場合もあるだろう