反緊縮派の勝利でますます混迷を極めるギリシャ問題。財政をここまで逼迫させた直接のキッカケは2004年のアテネ五輪だった。
02年のユーロ加盟で資金調達がラクになったギリシャ政府は、国債をジャンジャン発行。アテネ五輪を口実に新国際空港や地下鉄、高速道路などのインフラ整備にのめり込んだ。関連支出の総額は当初計画から倍増の89.5億ユーロ(約1兆円)に膨張。夏季五輪では歴代5位の出費になった。その後も年金受給者や公務員への厚遇で国債を刷り続け、借金は15年3月時点で3130億円ユーロ(約42兆円)までかさみ、対GDP比177%に達した。ユーロ圏断トツのヒドさだ。
ヤバイのは、日本もギリシャと全く同じことをしていることだ。2020年開催の東京五輪にかこつけて公共事業にカネをつぎ込んでいる。五輪のための施設整備費だけでも総額7141億円に膨らみ、さらに東京の再開発まで進めるつもりだ。これじゃいくら費用がかかるのか分からない。
経済評論家の斎藤満氏はこう言う。
「ギリシャ危機は他人事ではありません。この国の政治家や官僚はイベントを大義名分に大盤振る舞いするのが大好きですから、五輪は絶好のエクスキューズ。政府は五輪開催を経済成長につなげるとうそぶいていますが、借金頼みです。現在、日本は税収50兆円に対し、歳出100兆円の放漫財政。借金が雪だるま式に膨れ上がるアンバランスな経済構造なのです。五輪開催翌年の21年は大不況が予測されています」
■どんどんかさむ費用
目玉とされる新国立競技場の総工費は、当初予算の1300億円をはるかに上回る2520億円に膨れ上がっている。読売新聞の世論調査では、計画を〈見直すべき〉が81%を占め、〈そうは思わない〉などを圧倒した。お祝いムードにのまれて浮かれ気分だった国民もさすがに目を覚ましている。
「日本の財政は確実に破綻に向かっています。この20年間、借金を続けてきた上に今後5年間、五輪開催までカネを使いまくる。公共事業をバンバン増やして、資材や人材不足に拍車を掛けた結果、費用はどんどんかさむ。無策としか言いようがありません」(斎藤満氏)
東京五輪の後、日本もギリシャのようになっているかも知れない。