"安全保障関連法案の審議が始まった5月26日に衆院本会議の代表質問を中継しなかったことが批判を浴びたばかりにもかかわらず、6月22日午前の「衆院平和安全法制特別委員会」でも“中継スルー”を決め込んだ。
特別委員会は安倍政権には都合の悪い内容だった。参考人として元内閣法制局長官の宮崎礼壹氏(法政大法科大学院教授)、阪田雅裕氏(弁護士)の両氏が出席。安倍政権が推し進める集団的自衛権の行使について、「黒を白といいくるめる類の主張」(宮崎氏)、「従来の憲法解釈の枠内から外れる」(阪田氏)と徹底的に批判した。
政府の「法の番人」だった内閣法制局長官の経験者が「安全保障関連法案は違憲だ」と口をそろえた意味はきわめて大きい。しかしNHKは特別委員会を中継しないばかりか、午後のニュースでも「5人の学識経験者」の発言として与党が推薦する参考人の「合憲論」と並べて淡々と紹介するだけだった。
さらに『ニュースウオッチ9』(月~金・午後9時~)では5人の学識経験者の見解を報じたのち、「歴代の内閣法制局長官がいろんな話をしているが、我々は国民の命と平和な暮らしを守り抜くという大きな責任がある」という安倍首相の“反論”をご丁寧に報じている。
この反論は特別委員会と同じ日の午後に開催された「参議院決算委員会質疑」での発言だが、NHKはこちらはしっかり中継していた。アベさまの言い分は放送すべきという判断なのか。椙山(すぎやま)女学園大学理事(ジャーナリズム論)で元NHK記者の川崎泰資氏が警鐘を鳴らす。
「これまで重要な審議は中継するのが当たり前でした。国民の関心が高い問題なのに立て続けに放送しないのは異例です。安倍政権に不利な内容は放送したくないということなのだとしたらNHKは開局以来の危機的状況でしょう」
なぜ22日の特別委員会を放送しなかったのか。
「本会議の施政方針演説や所信表明演説などの政府演説や関連する代表質問など国民の関心の高い重要案件を扱う委員会の質疑などを、適宜、総合的に判断して放送しています」(NHK広報局)"