抗うつ剤 SSRI SNRI

抗うつ剤 SSRI SNRI

SSRI ルボックス デプロメール パキシル ジェイゾロフト

Selective Serotonin Reuptake Inhibitor 選択的セロトニン再取り込み阻害剤
最新世代の抗うつ剤の一つ。世界初の製剤は米国で1988年発売のプロザックである。うつ病に使用するに限らず、人生に前向きになるハッピードラッグ、性格を積極的にする薬剤として話題になった。その後製品開発が続き、日本では1999年ルボックス、デプロメール、その後パキシル、ジェイゾロフトと発売された。ルボックスとデプロメールは全く同一薬剤で、二社がそれぞれの名前で発売している。効果についての仮説はこうである。「うつ病・うつ状態は脳内の神経伝達物質であるセロトニンが減少している。SSRIを飲むとセロトニンが増えて症状が楽になる。」

 実際の臨床ではうつ病、うつ状態、パニック障害、不安性障害、社会不安障害(Social Anxiety Disorder : SAD)、全般性不安障害(Generalized Anxiety Disorder : GAD)、強迫性障害(Obsessive Compulsive Disorder : OCD)、統合失調症にともなううつ状態などで用いられる。現在のところSNRIと並んで第一選択薬であると思う。体質によっては三環系抗うつ剤(たとえばアモキサン、トリプタノール)、四環系抗うつ剤(たとえばテシプール、テトラミド)がよい場合もあるし、これらでないといけない場合もある。ルボックス、デプロメールは代謝酵素を阻害し、他の薬剤に影響を及ぼす。パキシルとジェイゾロフトは薬剤相互作用が少ないと評価されている。

服薬時の注意点は、
  • 効果が現れるまで、約2~4週待つ。
  • 少量から始めて、少しずつ増量する。ルボックス、デプロメールなら150~300ミリグラムまで、パキシルなら40~60ミリグラムまで、ジェイゾロフトは100ミリグラムまで使用する。
  • もし起こるとして最初の副作用は吐き気、胃もたれである。少量の胃薬で対処する。眠気は一週間以内に消える。
  • 再発を防ぐため、症状がよくなってもしばらくの間はくすりを続ける。症状がすっかり消えて、最低二ヶ月は飲む。徐々に増やしたのと似たペースで、徐々に減量してゼロにする。
  • 家族からの「いつまで薬に頼っているんだ」の一言が治療を振り出しに戻してしまうので、家族の理解が大切である。
  • 常習性や依存性はない。誤解をなくしたい。
  • 最後の注意点として、SSRIがあるからといって、無理をしてはいけない。SSRIを使わなくてもすむように、うつの予防に注意し、スケジュールを削り、疲れたら休む、睡眠不足と食欲不振の時には休息を心がけたい。

SNRI トレドミン

Serotonin Noradrenalin Reuptake Inhibitor Selective Serotonin & Norepinephrine Reuptake Inhibitors 選択的セロニトニン&ノルアドレナリン再吸収阻害薬

SSRI第一号のPROZACが1988年に発売され、SNRI第一号のEffexorは1994年に発売された。成分名は”Venlafaxine”(ベンラファキシン)。日本ではトレドミン(塩酸ミルナシプラン)が認可された。脳内の神経伝達物質であるセロトニンとノルアドレナリン(ノルエピネフリン)の両方を増やし、うつ病・うつ状態を軽減すると説明されている。単純化すると、
  • セロトニンを増やしてうつ気分と不安を解消する。
  • ノルアドレナリンを増やして意欲・やる気・おっくうさを改善する。
実際には公式通りではなく、その人の体質や性格と関係してSNRIかSSRIかその他抗うつ剤かと選択する。人種や個人により薬剤の分解酵素の割合が異なり、二次代謝産物や三次代謝産物の体内滞在時間と濃度が異なる。それにより作用・副作用の程度が異なる。注意点はSSRIとほぼ同じ。SSRIよりも後発であるが薬価は安い。

三環系抗うつ剤、四環系抗うつ剤

化学構造式を見ると環が三つある薬が三環系、四つある薬が四環系である。長らく三環系が使われ、次に四環系の時代があり、現在はSSRI、SNRIに移行している。しかし現在でも非常に貴重な薬剤である。

  • たとえばアモキサンはうつ気分に非常に有効。
  • アナフラニールは強迫性障害に非常に有用。
  • REM関連症候群にはトリプタノールが有効。
  • 意欲を出すにはトフラニールが有効。
  • テシプールは軽度の気分障害に有用。

SSRI、SNRIと比較して多少副作用がきつい。たとえば口渇、眠気、便秘、さらに増量すると尿閉が現れるが、減量すれば完全に元に戻るので心配はない。子供の夜驚症や夜尿にトリプタリノールを用いる。最初トリプタリノールを口に入れてためらっていると舌がしびれてくる。びっくりすると思うが安全な薬なので心配しないで飲んで欲しい。