不眠症・最近の考え方

不眠症・最近の考え方

患者さんの中には睡眠薬を「クセになるのではないかと心配だ」と考えている人がたくさんいらっしゃいます。実際には現在の睡眠薬は、かなり改良されています。昔の薬とは違います。量がどんどん増えたり、「依存性」が生じたりすることはありません。

 

一度睡眠薬を飲み始めると睡眠薬なしでは眠れなくなってしまうのではないか心配です。

睡眠薬を利用して毎日よく眠れるようにすることが肝心です。よくなれば睡眠薬をやめられますが、無理をしてやめる必要はありません。使い続けているうちに、自然に飲み忘れる日が増えていき、「もう飲まなくていいな」と感じることができます。自然にやめられます。

やめ方を教えて下さい。

一時的にストレスがあった場合、不眠症は大変起こりやすいのですが、次のように説明します。「まず毎日安心して眠れるように睡眠薬を使いましょう。よく眠ることがクセになったら、薬は自然とやめられるようになります」。過度に心配しなくて大丈夫です。
睡眠薬の減量は、完全に眠れるようになってから、2ヶ月様子を見て、開始します。焦って急にやめると、反跳性不眠(悪夢、中途覚醒)や退薬症状(頭痛、頭重、めまい、不安、焦燥、いらいら)が起こることがあります。その恐怖感からかえって、薬に対して神経質になってしまうことがあります。かならず、正しいやめ方をしましょう。一回の量を少しずつ減らしていくか、週に一回程度の休薬日を設けるか、患者さんの状態によって考えていきましょう。わたしたちは一日量を1→3/4→1/2→1/4→0というような減らし方をおすすめしています。
その際に少しでも不眠が再発したら焦らずにしばらく減量は中止します。体調が回復すれば必ずやめられるのです。

長い間の不眠です。体質でしょうか。

一方、体質的に慢性の不眠症の患者さんがいらっしゃいます。その場合には、10年、20年と長期連用しても問題ありません。そうした患者さんは副作用もなく、適切な睡眠習慣を維持し、人生を広げています。睡眠薬を適切に使用して、「自分が睡眠をコントロールできる」という自信を持って下さい。そこから人生全般に対しての積極的な姿勢も生まれ、人生を拡大することができるようになります。無理に薬を止めて、不眠が再発し、自信をなくし、人生が萎縮する、それが一番残念なことだと思います。よく相談しましょう。専門医はあなたを守ります。

睡眠障害対処12の指針(厚生労働省 平成13年度研究班報告より改編)

  • 睡眠時間は人それぞれ、日中の眠気で困らなければ十分。睡眠の長い人、短い人がいて、季節によっても変化する。8時間にこだわらない。歳をとると必要な睡眠時間は短くなる。
  • 刺激物を避け、寝る前には自分なりのリラックス法。就寝前4時間のカフェイン摂取は避ける。就寝前1時間の喫煙は避ける。軽い読書、音楽、ぬるめの入浴、香り、筋弛緩トレーニングなどのリラックス法。
  • 眠くなってから床につく、就寝時刻にこだわりすぎない。眠ろうとする意気ごみが頭をさえさせ寝つきを悪くする。
  • 同じ時刻に毎日起床。早寝早起きでなく、早起きが早寝に通じる。日曜に遅くまで床で過ごすと、月曜の朝がつらくなる。
  • 光の利用でよい睡眠。朝、日光にあたる。日光を浴びると脳内のメラトニンが調整される。
  • 規則正しい3度の食事、規則的な運動習慣。朝食は心と体の目覚めに重要、夜食はごく軽く。運動習慣は熟眠を促進。
  • 昼寝をするなら、午後3時前の20~30分。長い昼寝はかえってぼんやりのもと。夕方以降の昼寝は夜の睡眠に悪影響。
  • 眠りが浅いときは、むしろ積極的に遅寝・早起きに。寝床で長く過ごしすぎると熟眠感がなくなる。
  • 睡眠中の激しいイビキ・呼吸停止や足のぴくつき・むずむず感は要注意。背景に睡眠の病気があることがある。専門の治療が必要。
  • 十分眠っても日中の眠気が強いときは専門医に。長時間眠っても日中の眠気で仕事・学業に支障がある場合は専門医に。車の運転にくれぐれも注意。
  • 睡眠薬代わりの寝酒は不眠のもと。睡眠薬代わりの寝酒は、深い睡眠を減らし、夜中に目覚める原因となる。睡眠の質が悪くなる。
  • 睡眠薬は医師の指示で正しく使えば安全。一定時刻に服用し就寝。アルコールとの併用はしない。生活の質の改善を目指す。