抑制系と逸脱系 ネット社会全体が逸脱を競う状況

脳の1.抑制系の発達と2.欲動系・報酬系の発達が、並行していないと不都合が起こる。
その論文によれば、性的欲動が発展するころ、仲間の中での承認を得るために情熱的あるいは逸脱的に振る舞うようになり、それは報酬系の発達と見てよい。
その時、同時並行的に脳では抑制系の発達が起こる。社会システムは抑制系の発達を手助けするように仕組まれている。そして抑制系を発達させれば、社会から、大人として認められる。
青年社会の中では他人よりも秀でていることまたは逸脱していることが、仲間内での高い評価に結びつく。
一方で、大人の技術系組織の新入りとしてマイスターのもとで修行する場合、抑制系の発達が大人社会からの高い評価を受ける。
この両者の発達が同時並行的に発生することによって、
個体として性的に成熟し、かつ、集団内個体として大人社会に適応するという2つの課題を達成することになる。
生活するためには、既成の大人社会の序列の一番下にまず並び、そこから徐々に上に行くしかなかった。
徒弟制度はその典型である。
そこでは我慢ができる人間であることを示すことが、受け入れられる条件である。
日本で言えば相撲社会。
同時に、青年仲間社会の中では、表の社会秩序からの適度の逸脱が尊重される。
この2つが同時並行して存在し、その中で、大人社会からの承認、青年社会からの承認、異性からの承認などの課題が達成される。
現代では、欲動系・報酬系の発達はよく促されているが、抑制系の発達については、あまり重視されていないのではないかと思う。
社会全体にそのような傾向であるが、それが顕著に現れているのは、二世三世が跋扈する社会である。
家系のゆえに甘やかされ、抑制系が発達しない。唯一、父親の権威が、抑制系を発達させる要因であるが、母系が強くて、父系が弱い状況では、抑制系が発達しない。
また現実社会から逃避して擬似的社会に生きている場合、脱退が自由なのであるから、抑制系は発達しない。一番の新入りとして下積みから開始するという習慣もない。
そこは未熟な欲望が比較的承認されやすい場所である。抑制的な態度は目立たないものとなりアピールしないものとなり埋もれてゆく。軽躁的なはしゃぎぶりが尊重される。
正確な翻訳は別として、とりあえずは、抑制系と逸脱系と表現しておけばよいのだろうか。ブレーキ系とアクセル系といってもよい。
社会階級の上昇達成と性的達成の両面における、ブレーキとアクセル。
長い間安定したシステムを運営してきたのが人類であるが、最近になってますます、抑制系は消失し、逸脱系が尊重されるようになっている。
逸脱を競うのが青年社会であったが、ネット社会全体が逸脱を競う状況になっている。