「誰かに老後の面倒をみてもらいたいが、誰もみてくれない」

「大事なのは交友関係でしょうな。第一の人生で蓄積されたものが第二の人生で開花するといいましょうか。ゴルフとかマージャンはダメですよ。あれは4人一組ですから世界が狭くなるし、会社の延長ですからね。もっと広くお付き合いをしないといけません。そう考えると、男は長生きが下手ですな。なにしろこれが取れないから」
 彼はそう言って、右手で肩をさっと払った。肩書が取れないということである。つい先日も78歳の男性が「誰かに老後の面倒をみてもらいたいが、誰もみてくれない」という相談をもちかけてきたという。佐田さんが「ご家族、ご親戚の方とは……」と言いかけると「付き合いたくない」と言う。「じゃあ、ご近所の方とお付き合いしなくちゃ」とアドバイスするとをそれも「付き合いたくない」。「それじゃ、民生委員の方によく話をして」と行政の窓口を紹介しようとすると、「民生委員とは付き合いたくない」と一蹴した。誰かに面倒をみてもらいたいが誰とも付き合いたくないのである。
「ボランティアに来ても、『おじさん、ちょっとそのハシゴ取って」と言われたぐらいで、すぐカチンときたりする。銀行の元支店長とかね。組織にいた時の感覚が抜けないんでしょうな。すぐに『効率』『営業』『経営』『戦略』なんていう職場用語を使ったりしちゃう。地域用語を使えない。地域は競争社会じゃないのに……」”