裁判官協議会が、暗黙の、最高裁事務総局の方針、意向伝達機関として機能している

裁判官協議会が、暗黙の、最高裁事務総局の方針、意向伝達機関として機能している
最高裁が、建前上は、裁判官の自由な協議を行う場として、やってきた
裁判官協議会のあらましについて説明しましょう。協議会を主催するのは、最高裁事務総局です。協議会には、たとえば執行や破産等の特定の事件を対象とする小規模不定期のものと、全庁参加の大規模定期的なものがあります。後者の中で最も重要なのが、民事局の、全庁参加の協議会でしょうね。
この協議会は、年一度、秋に開催され、全国から高地裁裁判官、主として地裁裁判長クラスの判事が参加します。全国の裁判官たちに与える影響の大きい重要な会合です。この小説の中の原発訴訟協議会では、原発訴訟に民事と行政があるため、民事局と行政局の共催となっています。
こうした協議会は、学者たちが行っている研究会とは全く性格が異なります。名称こそ「協議会」ですが、その実態は、基本的に、「上意下達、上命下服会議、事務総局の意向貫徹のためのてこ入れ会議」に近いものです。
テーマは、民事局等の事件局が、最高裁長官や事務総長の意向に基づきつつ決定し、出席者は高裁長官や地家裁所長が決めます。出席者のうち東京の裁判官や事務総局と関係の深い裁判官に対しては、事前に一定の情報提供や根回しが行われることもあります。
もっとも、協議問題は、事件局が決めたテーマに沿って、協議会に参加する全裁判所、つまり「各庁」が提出します。あくまでも、「建前」は、裁判官による自主的な意見が述べられる場なのです。しかし、これにも抜け穴があって、東京の出席者や事務総局と関係の深い出席者は、事件局の求める協議問題を「やらせ」で出題することがあります。事務総局の課長や局付が、内々にお願いして、提出してもらうのです。
以上のとおり、実際には、最高裁事務総局主導の、その意向を伝える協議会という側面が強いのです。